もー、めんどくさくて仕方ない。行ったら行ったで「よかったー」って感想に落ち着くに決まっているのですが、いちいち感動するのが「めんどくさい」のです。ま、プラチナチケットだし、礼真琴さんも頑張っていることだし、罰当たりなことを言ってはいけません。というわけで、星組『スカーレット・ピンパーネル』東京公演を観に行ってきました。
大劇場で見た前回から2ヶ月弱。本公演は東京でスケールアップしていることのほうが多いですから、今回もそうだろうと。紅ゆずるさんの歌唱が格段に良くなっていました。それ以外は大勢に影響なしといったところ。
気になったのがひとつ。その紅さんのアドリブです。5回は下らない。ファンは大喜びでしょうけど、これだけのよくできたミュージカル、できれば脚本と流れを大事にしてほしい。最初はぼくも笑っていたのですが、だんだん「?」となってきました。あまり目立ちすぎると今度は鼻につくんです。歌唱も演技も相当努力の跡がみられるのに、もったいない。しないでとは言わないまでも、もう少し抑えたほうがむしろ効果的じゃないかな。「トップお披露目なんだから寛容に」と言われそうですが、野暮天は承知。気になるものは気になるからね。
そういえば珍しいことがありました。1幕「炎の中へ」の曲終了直後、幕が下りたまま次の場面に進まず、しばらく(体感5分くらい)中断していました。客電が点くことはなかったですが、客席がざわついています。と、幕の向こうから「お待たせしましたぁー!」と紅さん。幕間で「舞台機構のトラブルによる中断」という説明とお詫びのアナウンスがありました。無事再開となってよかったです。スタッフはハラハラでしたよね。
しかし思いのほか、この日のスカピンは感動が薄い。何回も見ているからかと思いきや。実は観に行く当日の午前中、タカラヅカ・スカイ・ステージで、『タカラヅカ・ドリーム・キングダム』(’04年雪組・宝塚)を放送していて、これをつい見てしまったのがいけなかった。DVD、持ってるのに。
当時の雪組は、今の星組のようにトップスター人材が量産されていたように思います。壮一帆さん、音月桂さん、凰稀かなめさん(冒頭のだるまに仰天)。なかでも歌の格が違うのが貴城けいさんでした。
「声量がある、音程がとれるだけではない。本当に歌がうまい人は”響かせ方”が違うんです」とはボーカル教室のO先生の弁。貴城けいという歌い手はまさにこの点、「響き」だと思う。この人の歌唱力に匹敵する現役ジェンヌって誰なんだろう。教えてほしい。
朝海ひかるさんのダンスといい、演出家3人の競作といい、横尾忠則さんの装置といい、高橋城さんや斉藤恒芳さんの楽曲といい、耽美な雰囲気といい。
この演目は個人的に宝塚のショーのベンチマークとなっています。こういう作品、もう望めないのでしょうか。また別の機会に触れます。