『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観てきたので、ネタバレなしで振り返ります。
結論から言えばやや不満です。
個人的にハードボイルドは好きだけど、主人公が007=ジェームズ・ボンドとなれば話は別。
修羅を背負って苦悩、内省するボンドって見たいですか?
ダニエル・クレイグ版のシリーズ5作は、孤高とハードボイルドに振った、初めての007。
個人的にそこはひじょうに気に入っていたのですが、今回の5作目は行き過ぎの感。
本作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」を観終わっての第一印象は「詰め込みすぎ」「『ダークナイト ライジング』みたいだな」と。
悪役を演じるラミ・マレックだけでなく、宿敵プロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)も出す。
いわゆるボンドガールはレア・セドゥだけでなく、ボンドを助けるキャラクターでアナ・デ・アルマス。
Q(ベン・ウィショー)がゲイだとわかるセリフがあれば、ポスト007として黒人女性のラシャーナ・リンチが「時代が変わったの」とボンドを諭す。
ポリコレを意識したキャラクターや、てんこ盛りのアクション、後半に明かされるボンドの意外なパーソナリティといい。
あれもこれも欲張りすぎると、かえって内容が薄まるという皮肉。
日系人キャリー・フクナガ監督の趣味か和の描写が出てくるも、おたふくみたいな能面や枯山水に首を傾げたくなります。
唯一007映画らしさを感じたのが、CIAエージェントのパロマを演じるアナ・デ・アルマス。
マティーニを酌み交わしつつ、一瞬の艷やかな会話とアクションの緩急。
女性に激しいアクションをさせる今的要素を取り入れつつ、「伝統」も残すこの場面がお気に入り。
『007 スカイフォール」から急激に彫り深く、老けてきたダニエル・クレイグさん、おつかれさまでした。
15年で5作品。
前作『007 スペクター』で終わらせておけば尚可でしたけど、製作陣が許さなかったよね。
次作以降は、軽薄で女好きでしれっとすごいことをやってのけるボンドに回帰してほしい。
ニューヨークの同時多発テロ以降、アクション映画はすっかり内省的な作風に変わってしまった。
それはそれで良いんですけど、007にはそろそろ揺り戻しが来るころじゃないかな、来ていいよね。