「用の美」なんてことを申しまして。
味(「時代が付く」ともいう)があって、日常の生活用品として長く根づく(あるいは日常の延長線上にある)民藝が好きなんですよ。
でも民藝家具にせよ、民藝雑貨にせよ、モノがいいのは高価でとても手が出ない。
本来は「暮らしに根づくもの」のはずなのに、手仕事の手間やその希少価値性ゆえ、また機能性・量産性重視の世の中ゆえ、姿を消しつつあるのは仕方のないことですが。
身近でないからこそ、『柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年』のような大規模展をやってくださると、そら観に行きますよね。
で、民藝といえば、個人的に芹沢銈介の大ファンでして。
そちら目当てに足を運びました。
芹沢銈介といえば「型絵染」で人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定された染色家として有名ですが。
それ以外にも商業デザイナー・キュレーター・工芸家・装幀家ほか八面六臂に活躍した、今でいうマルチアーティスト(カタカナで呼ぶと軽いね)のハシリな巨匠ではないでしょうか。
芹沢銈介の仕事を、ほんの触りだけ挙げますと
-
- 日本民藝地図
- 川端康成『雪国』装幀
- 銀座あけぼの「味の民藝」の掛紙デザイン(春夏秋冬)
- しゃぶしゃぶ店「ざくろ」の軒灯・看板・品書きのデザイン
- 銀座「たくみ」ふきん図案
- 寿の字ののれん
- 「いろはにほへと」型染め
※太字は本展で展示
枚挙にいとまがないのですよ。
芹沢の作品は商業デザイン、図案に関心のない人からすれば「どこかで見たことある」くらいの感覚かもしれない。
けれども、それが100年経った令和の世にも使われ続け、今に伝えられ、ひっそりと定着している事実。
「良いものは良い、普遍的に」と改めて考えさせるものでした。