追加公演として発表された渋谷オーチャードホール2デイズ、クリムゾン公演のラストを観てきました(2021年12月8日、18時30分開演)。
結局サプライズはなく、ツアーを通して手堅い選曲。
サブライズ(=難曲やレア曲の演奏)を期待していたのですが、立川でそれがなかったことで、このセットリストからの大幅変更はもうないだろうと読んでいて、事実その通りに終わりました。
その点は正直残念で、曲数も多く、初期のアルバム群からまんべんなく楽曲をさらった2018年の公演が個人的にはベスト。
「BOLERO」「FRACTURE」を目撃できた、あの時間が至福でした。
がしかし、過去に囚われてはいけない、ましてや見る・聴く側が。
このツアー中、自分にそう言い聞かせてきたのですが、パフォーマンスがアップデートされていることはすぐに判りました。
なんてことはない、近年のライブ盤(『Live in Toronto』『Radical Action To Unseat The Hold Of Monkey Mind』など)と聴き比べると違いが歴然。
ミックスで整えているのは当然として、なんというか、今回のパフォーマンスはどこも恐ろしく凶暴で鬼気迫るものがありました。
インプロビゼーションという刹那も大事にしつつ、ライブを行うごとに完璧を追求し、進化を続けようとする。
コロナ禍において、バンドとして十分な練習時間が確保できなかったことで、持てるレパートリーで現時点最高を目指す。
こうした背景が今回のツアーの選曲であり、張り詰めたパフォーマンスになったのではと推察します。
ラストでフリップ師が上手のポジションから深々とおじぎするのが、お定まりになりましたが(そんなことしなくて良いのになぁ)。
この千秋楽では、ステージ中央に出てきて、満員の会場を満足げに見渡した後に一礼し、セルフィーして踵を返したフリップ師なのでした。
オミクロンとやらの拡散で、ツアー中に「外国人の入国禁止」という措置が政府によって取られました。
少し早ければ収束の気配もなく、少しでも遅ければ来日自体できず公演中止になっていたはずで、今回の公演実現は奇跡としか言いようがない。
コロナ禍での海外アーティストのライブということでも伝説的なライブとして、後世に語り継がれることでしょう。
未だ続く緊張状態で来てくれたメンバーやスタッフ、イベンターには感謝しかありません。
メンバーのコメントを見ると、2021年の日本ツアーをもって最後……なんてことが言われています。
たしかに1981年12月9日から日本のファンとのランデブーが始まり、その40年後にcompletion(完結)するのはストーリーとして頭にくるくらい完璧で、これで区切りとしたくなるのも分からなくもない。
ぼく自身は初期の楽曲を披露した現メンバーの2015公演が「最初で最後かな」と思って感傷的になったのですが、今や気持ちは真逆。
フリップさん、今回の一連の公演を見たかぎり、隠居するにはまだ早い。
次はまた3年後くらいに来てくれると思ってますよ。
「新たな始まり」として。
A significant moment in time as King Crimson ‘moved from sound to silence’ today in Japan. pic.twitter.com/wRMIIrLUiC
— KING CRIMSON (@DGMHQ) December 8, 2021