この人センスいい、この人のセンスを真似たい。人を好きになる、その人に魅了される背景に、センス(感覚)が挙げられると思います。感覚や感性などというフレーズは、どうにも曖昧で得体の知れないものでもありますが。その人のセンスへの共鳴なくして、好きになることはないでしょう。
で、そう感じるうちの一人が、この方、松本隆さんです。
松本隆さんは何がすごいかといえば、「この曲も、あの曲も」というくらい、誰もが思いつくヒット曲の詞を付けていること。しかし、2000曲ともいわれるその詞の数もさることながら、
・情景の見える詞を書く
・SNSなどを通して見えるライフスタイル
というのが松本さんが本領なのだろうと思います。その引き出しは、未だチラ見せ程度なのではと思えるくらい。
情景の見える詞とは、聴き手がその歌・曲を聴きながら、場面を想像できる、脳裏で描けるってことです(ここで詞の内容を書くわけには行きませんが)。松本さんの手掛けた名曲たちを聴きながら「どうして、こういう詞が書けるのだろう」と思わずにいられません。
僕は30代までは音楽とは「曲こそすべて、詞は後付け」なんて考えている底浅野郎でした。が、年を取るにつれ、昔よく聴いた曲の中でも、自分の好きな曲の多くを松本さんが付けていることに気づき(たとえば「渚のカンパリ・ソーダ」寺尾聰、「探偵物語」薬師丸ひろ子、「さらばシベリア鉄道」太田裕美etc……)、その紡ぐ物語を垣間見る楽しみを覚えたのです。
個人的には松田聖子よりも中森明菜にもっと付けてほしかったと未だに思いますが、たぶん世界観の違いなのだろうな。松本さんの描く女性は、良い意味で「ぶりっこ」だから。
SNSを通して見えるライフスタイルもそう。InstagramもFacebookも、松本さんは使い方が非常に上手。いや上手いというより、やはりセンスが抜群にいい。70歳近いと思えない若々しさと、おしゃれな人だというのがよく分かる。上の朝日新聞の記事にもあるように、神戸に自宅、京都に仕事場なんてサイコーじゃないか。松本さんのSNSには、だからその辺りがよく出てきます。
類まれなるセンス。日常の切り取り方が上手いよなぁと思うんですけど、考えてみれば、あまたの詞というか文体を持っている松本さんからすれば、SNSも単なる面白いツールのひとつなのかもしれない。
僕ごときが語るのはおこがましいですが、自分が共鳴する人のことを書くのは楽しい。これからも、人について書いていこう。