いやぁー、拾い物でした。加藤和樹&凰稀かなめ主演の芝居『暗くなるまで待って』、素晴らしかったです。脚本・演出よし、美術・装置よし、出演者よし。ようやく観られた今年最初の舞台がこの作品で良かったです。サンシャイン劇場で2019年2月3日まで。その後、兵庫、愛知、福岡公演があります。
オードリー・ヘプバーン主演の同名映画(WAIT UNTIL DARK/1967年、テレンス・ヤング監督)が有名なサスペンスですが、もともと舞台用に書かれたこの戯曲は、『ダイヤルMを廻せ!』のフレデリック・ノットによるもの。ですから、面白くないわけがないのですが、舞台版ならではの演出もあって、映画を見ている人もそうでない人も楽しめること間違いなしです。
凰稀かなめさんが盲目のスージーを、彼女から「ある高価な、しかし持っていればお尋ね者となる」ものが入った人形を、血を流すことなく奪おうとする犯罪者ロートを加藤和樹さんが演じています。
ロートと組むことになる詐欺師マイクとクローカー役に高橋光臣さん、猪塚健太さん。スージーの夫で写真家サム役に松田悟志さんが扮します。
加藤和樹さんは、七変化とまではいかないまでも、いろんな男に変装してヒロインをだまそうとします。冒頭などは『エリザベート』のドクトル・ゼーブルガーを彷彿とさせる登場の仕方。あるときは白髪の老人に、またあるときはオールバックの青年に、そのまたあるときは残忍な殺人鬼という本性を……。そんな感じで、ファンにはたまらないサービスシーン満載です。今回は歌わないのかって? それは言わないでおきましょう。
ほとんど出ずっぱりの凰稀かなめさんは、この舞台でいちばん体力と神経を使う役でしょう。この人はスタイルのいい美人というだけでなく、滑舌もいいし声もよく通る。この調子なら宙組男役トップスターという肩書に頼らなくても(もちろんトップスターであることはすごいことですが)、舞台(あるいは映像)で数多く見られるのではないでしょうか。2人とも素晴らしかった。
助演で光っていたのはセリフ量が多く、犯人一味でありながら、スージー寄りの抑制された演技を求められるマイク役の高橋光臣さん。
ヒロインを助ける少女グローリア役の子が光っているなと調べてみたら、黒澤美澪奈さんという人。「さくら学院」というアイドルユニット?(わからん)の元メンバーだそうで、出番こそさほど多くはありませんが、かなり魅きつける演技をしていました。ぜひ他の舞台でも見てみたいと思いましたよ。
ハラハラドキドキ感満載。ヒロインと犯人グループとの攻防・頭脳戦は、目が見える観客には、その現場に居合わせたかのような緊張感があります。深作健太さんの演出は静と動のバランスが絶妙で、あまり説明的すぎずに伏線を回収している点も非常に良かったです。
正直期待していなかったけど、観終わったら軽い興奮を覚える芝居。鑑賞後、本当に恐れ入ったという、そういうものに出会ったときのうれしさったらないですよね。この舞台はそんな作品でした。チケットはまだあるようですから、チェックしてみてください。凰稀かなめさん、加藤和樹さんのファンは特に見逃しちゃだめですよ。
ちなみに、アイキャッチ写真は帰りに寄った池袋の「大衆酒場バッカス」で。店内のテレビは大坂なおみちゃんの全豪決勝、店内は大盛り上がり。モニタを見ずともお客さんの歓声の強弱で試合の状況がわかりました。クビトバもよくやった、2人ともおめでとう。