クエンティン・タランティーノ監督の通算9作目『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観てきました(ここでネタバレはしません)。けれんや過剰な世界観といったタランティーノ節は鳴りを潜め、1969年前後のハリウッドを舞台に、ピークを過ぎた俳優リック(レオナルド・ディカプリオ)と専属スタントマンのクリフ(ブラッド・ピット)との友情を中心とした物語が淡々と描かれます。
華やかなりしハリウッド全盛期やヒッピー文化を背景に、スティーブ・マックイーン、ブルース・リーといった実在した俳優も登場します。主人公リックの屋敷の隣人に越してくるのは『ローズマリーの赤ちゃん』などを手がけた売れっ子映画監督ロマン・ポランスキーと、その妻で女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)。
1969年8月9日、妊娠中だったシャロン・テートは自宅に押し入ってきたカルトグループ(マンソン・ファミリー)の信者によって殺されてしまいます。映画はまさにこの日の出来事も描いていて、事件に知識がある人なら暗澹たる気持ちになると思います。さて、映画では……まぁ見てみてください。
それにしても、まぁみんなタバコも酒もみんなバンバン口にします。リックは超ヘビースモーカーで、しょっちゅう「オエッ」となるような咳までしてる(吸いすぎ特有の状態、スモーカーなら分かるよね)。
タバコに負けないくらい出てくるのが酒。特にカクテルです。冒頭で2人が飲んでいるカクテルは、リックがミントジュレップ風、クリフがセロリの刺さったブラッディメアリー(飛行機の中でも飲むシーンが)。後半、泥酔して帰宅後にリック自らミキサーを回してマルガリータを作ります。
リックはしこたま飲む男として描かれていて、演技の肝心の場面でセリフを忘れてしまい、トレーラーに戻った後「このアル中野郎!」と鏡に向かって自らを罵ります。可笑しくも切ない(不安や恐れからアルコールに頼らざるを得ない落ち目俳優の心理)んですよね。
しかし、最もシビれたのは、映画プロデューサー役のアル・パチーノが、ウェイターにコニャックをオーダーする場面。
「ヘネシーXO、ロックで」
どうということないセリフなんですが、パチーノが言うだけで最高にカッコイイ。
米国の60年代カルチャーを、お酒という嗜好品の側面からも楽しめる映画です。