写真家・横井洋司さんの写真展「噺を写す」を観に行ってきました(フジフィルムスクエア 富士フィルムフォトサロン東京/〜2022年3月17日/入場無料)。
横井さんは昭和から令和にかけて半世紀にわたり落語家の高座の写真を撮影し続けてきた、演芸写真の第一人者。
鈴本演芸場ホームページの顔付け紹介で掲載されているトリの噺家の写真は、すべて横井さん撮影のものです。
展覧会にはすでに世を去った落語家(モノクロ中心)、活躍中の落語家(カラー)計約50点の銀塩写真プリントが展示されています。
圓生から先代の小さん、馬生、志ん朝、談志といった名人から、白酒、一之輔、喬太郎、花緑、市馬といった当代の人気者までズラリ。
写真の下に、噺家によっては何を演じているときか演目が記されているものも。
横井さんがその噺家についてひとことを記したキャプションも読ませます。
なかでも志ん朝さんは、横井さんが以前開催した写真展にドンペリを抱えて駆けつけたそうで、やることが豪気で目に浮かぶようです。
志ん朝の写真は1980年に「鰻の幇間」をかけたときで、モノクロながら華やかで明るい雰囲気が伝わってきます。
現在の噺家はカラーになるのですが、みなさん、どこか若い。
それもそのはずで、2000年代に撮影された写真が展示されていたから。
10年や15年違うだけで、ただでさえ老成した噺家なのに、ますます滋味深くなるもんだなぁ、と。
座布団一枚の上でたった一人が演じる高座ですが、写真からも伝わるその躍動たるや。
静止画なのに生き生きしていて、なんだか怖いものを感じさせました。
内面って誤魔化せない。
座布団一枚といえば、将棋の棋士を写した写真集もありますが、一見すると地味な姿が画になるのは、そこに死力を尽くしているからで。
高座にかける、一局にかける人となりが滲み出てしまうんでしょうね。
個人的な話ですが、むかーし雑誌編集に携わっていたときに、仕事で横井さんから噺家の写真(いやネガだったか、忘れた)をお借りしたことがあるんです。
出版社のロビーで待ち合わせて名刺交換し、ものすごく親切な方だったのを今でもよく覚えています。
そのときはまだ落語の良さを理解できない若造で悔やまれますが、こうしてずっと後に展覧会に伺えたことに感慨を覚えます。