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東京・かめありリリオホールで行われた『葛飾納涼落語会』、怪談全開……でもない、演目のバランスが楽しめました（2023年7月14日19時開演）。
戦艦山城 柳家小きち
団子坂奇談 入船亭扇橋
猫怪談 柳家さん花
中入り
『真景累ヶ淵』より 宗悦殺し 柳家喬太郎
前座の小きちさんは、さん喬さんのお弟子さん。「子ほめ」「道灌」のような前座噺ではなく、大胆にも自分で考えた新作を披露。その「戦艦山城」とはレイテ沖海戦で沈没した日本の戦艦。時を経て、尖閣を守る海自の艦船が遭遇するという、けっこう怖い噺。小きちさんは海自出身というだけに、内容は真に迫る生々しさ。いやはや面白い人が出てきましたね。
「団子坂奇談」は蕎麦屋さんの一人娘に惚れた武士が、蕎麦屋に婿として後継ぎ修行に入るも、娘の奇行を目にして恐怖に陥る噺。ホラーというか、まさに不思議な落とし噺。扇橋さん、気持ちよさそうに演じていたな。
さん喬一門の、さん花さんは「猫怪談」。初めて聴きました。怪談を銘打ちながら、全然怖くないし（むしろ可笑しいし）、猫もあまり出てこない。どちらかというとファンタジーの趣のある噺。まくらで飼い猫の生態について触れていましたが、あれはさん花さんの自慢話であり、のろけだったんだろうな。
トリは柳家喬太郎さん。お酒を飲む仕草も見事なんだけど、この人は「まずい酒を飲む」表し方も絶品。按摩の宗悦と、宗悦に借金返済を迫られお手打ちにしてしまう貧乏旗本・深見新左衛門、新左衛門の奥方、新左衛門の妾となるお熊、宗悦を斬り殺してから訪ねてくる按摩などなどの演じ分け。特に、奥方とお熊という女ふたりの姿。喬太郎さんの演じる女子は、時としてやりすぎ感がありますが、そういう演出なしでも自然なんですよね。
芝居センスがこれほどあると、落語家ではなく俳優として使いたくなるマニアックな映画監督がいるのも理解できます。
