新宿末廣亭2025年6月下席夜の部は柳家喬太郎主任公演。七日目に行ってきました。
(途中から)
蔵前駕籠 龍玉
漫才 ニックス
夏泥 喬之助
親子酒 さん八
ジャグリング ストレート松浦
猫の皿 馬生
(中入り)
しゃっくり政談 さん助
漫才 米粒写経
棒鱈 歌奴
馬のす 左龍
太神楽 鏡味仙志郎・仙成
社食の恩返し 喬太郎
『社食の恩返し』柳家喬太郎
喬太郎さんお得意のひとつ、ハートウォーミング版の新作です。
閉鎖が決まった社員食堂。3年そこに勤めていたおばちゃんも社員食堂を去ることになり、もともと住んでいた大阪に帰るという。
会社の周りにはファストフードしかなく、社員食堂を頼りにしていた若手男性社員の2人は意気消沈しつつも、おばちゃんに手料理をふるまう送別会を開く。
男やもめのふたりは自炊に疎いが、片方の社員のこぢんまりした部屋におばちゃんを呼び、出身地近くの阿寒湖にちなんだ食材の料理でもてなす。
「マリモの天ぷら」のように食べられないものまで出してくる男子に呆れつつも、その気持ちがうれしいと無理やりにでも口に入れるおばちゃんも可笑しい。
怪しい関西弁とともに終始ことば遊びで客席を笑わせつつ、きれいに着地させるオリジナルは『銭湯の節』をも彷彿させる温かさです。
まくらでは寄席のある東京4つの街のいかがわしさに触れつつ、国立演芸場の職員食堂の話題へと。
美味しさとか上等さとかじゃない。A定・B定・C定のような、いつも同じで変わらない安心感こそですよ。
変化の激しい世の中で、変わる・変えることばかりもてはやされますが、変わらない・変えてはならぬこともあるでしょう。
それがいかに難しいか。
喬太郎さんの噺を懐かしい心持ちで聴きながら、変えないことを通す一本気が今や絶滅危惧種的マインドになりつつあるなと気づく帰路。
そのまま飲みに出かけて沈思でした。