上野鈴本演芸場2024年3月上席は落語協会100周年記念興行の幕開け。
昼の部・楽日に行ってきました。
置き泥 一蔵
曲独楽 紋之助
つる 文菊
楽屋外伝 馬風
漫才 ロケット団
遥かなるたぬきうどん 彦いち
ぞろぞろ 扇太
勘定板 雲助
紙切り 二楽
四段目 正蔵
お仲入り
口上
浮世節 橘之助
『百年目』(前半)白酒
(後半)扇遊
落語『百年目』
小僧に対してのべつ小言ばかりの大店の大番頭が、芸者や幇間あげて向島に上がってどんちゃん騒いでいるところを主人に見られ、慌てふためく話。
実は大番頭は堅物を装っていて、主人や部下たる奉公人に隠れて遊んでいる筋金入り。
前半は大番頭が奉公人に小言ばかり、後半は大番頭が花見を兼ねて向島で遊んでいるところを鉢合わせた主人が、翌日大番頭に、余裕や持ちつ持たれつの大切さを諭す。
説教が続くストーリーなので個人的には苦手な話でしたが、白酒さんのそれ=主の小言と小僧のささやかな抵抗はそのまま笑いに転化。
後半バトンタッチされた扇遊さんは、ナンバーツーである大番頭と主との対話が軸。
主が旦那という言葉の由来=栴檀が育つとナンエンソウも育った。このふたつは私と番頭であるお前の仲と同じ。
そう説きつつ、主人は暖簾分けできずにここまで来たのはお前がしっかり者だから。これまで全く確認しなかった帳面も、昨日のお前の遊びっぷりが不安になり、初めて見てみたがこれっぱかりの穴もない。
扇遊さんの演じる主は、そうやって懇々と諭しつつ。
番頭に子どものころのお前は見込みがなく、帰そうかと思ったが、立派になったじゃないか。小僧に悪いところを叱るのではなく、良いところを褒めるように、と。
この辺りが少し今的でありますが、見事な主人の人間性ですよね。
人の器の大きさというものを考えさせられ、また非常に心動かされた一席でした。
実のところ、この演目の小言ばかりのストーリーが苦手だったのですが、今日で見方が変わりました。
百年目、おめでとう。