上野鈴本演芸場10月上席夜の部は、人間国宝・柳家小三治さんがトリです。初日に行ってきました。
10日間あるうち、1日~5日までのみ主任を務めるスケジュール(6日~10日は春風亭一之輔さん、桃月庵白酒さん、柳家権太楼さん、柳家花緑さんが交代です)。この5日間、カレンダーは月曜から金曜までの平日で、休日は見られません。
小三治さんは寄席に出ない印象。貴重なうえに、このレアなスケジュールです。試されてますねぇ。とにかく見られるうちに見たいので、仕事を強引に切り上げて、ダッシュで鈴本に入りました。中入り後から、なんとか間に合った。
会場は空席を見つけるのがやっとなほどの、9割の入り。さすがに小三治さんです。僕が入ったときは紙切りの林家楽一さんが切っていたところ。客席に子どもの姿を見つけて、リクエストを応えていました。ヒザ前の柳家小ゑんさん、柳家小菊さんの粋曲、そして小三治さんの登場です。
割れんばかりの拍手に迎えられ、「今日あまり声が出ないんです」と話し始めた小三治さん。もともと淡々とした口調に、輪をかけて声が抑制されている。だからか、その一挙手一投足を見逃すまい、聞き逃すまいと、客席全体が固唾をのんでいる感じでした。
大泥棒として知られる石川五右衛門の釜茹でならぬ「釜揚げの刑」の話に始まり、五右衛門が何を盗ったかは案外知られていない、という型どおりのまくら。そこからの「転宅」でした。
身体は小さくても、存在がとにかく大きい。語り口は軽やか。力を入れている様子は全くなし(手抜きという意味ではなく)。「人間国宝」と言わなくても、やっぱり大きいのだと思います。前も言いましたが面白いというより、格好良いのですよね、小三治さんって。