小説からエッセイまで、ビジネス書以外で読んだ本についての短いメモです。
よくある順位づけはしません。
たったこれだけ?な量だし、ジャンルもバラバラなのでね。
男のチャーハン道 (土屋敦/日経プレミアシリーズ)
炒飯がどうしたら上手くできるかを、素材から中華鍋に至るまで、ひとつひとつ最適解を探し、究極を目指す過程を記したもの。
気がついたら付箋だらけになりましたけど、冷やご飯に限るという決めつけがイヤw
わざわざ炒飯のためにメシ炊きますよ、ぼくは。
中華鍋は買っていないですが、フツーのフライパン(というかスキレット)でも十分。
結局は自己流に落ち着きました。
あと、肉は入れたほうが旨いです、間違いなく。
殿山泰司ベストエッセイ(殿山泰司/ちくま文庫)
まるで酔っぱらいの話のような文章。
でも、殿山さんの頭はシャキッとしてるのだと不思議とわかるし、読んでいてまったく不快感がない。
それどころかしゃれててインテリジェンスもある。
酒と音楽とミステリとスケベと知性、すべて並列してる人生すてきだ。こういう文章が書けるなんて!
JR上野駅公園口(柳美里/河出文庫)
故郷の相馬を捨て死に場所を求めて上野にたどり着いたホームレスの物語。全米図書賞受賞作。
暗い。ひたすら暗い。
が、途中から俄然引き込まれる。
なぜホームレスとして生きざるを得なかったのか。
昭和と平成天皇の行幸啓を目の当たりにする主人公の思念よりも、主人公がホームレスに至る過程と、ホームレスとして現在を彷徨う内面描写に立ち止まらされる。
2020年の『いだてん』が表の東京史なら、この小説は東京の裏面史ともいえる。
十二人の手紙(井上ひさし/中公文庫)
アイデア勝ちの推理小説。
一見バラバラの手紙のやりとりを短編小説のように、その「点」が終幕でひとつの物語に収斂する。
どうやってオチをつけるのかは読んでのお楽しみ。
「手紙の書き方」のお手本書籍の例文を換骨奪胎……どころか、そのまま採用しているものもあり、着想の妙というか、この人を食った感じもさすがとしか。
盗まれた顔(羽田圭介/幻冬舎文庫)
指名手配犯の顔を記憶に焼き付け、街頭で識別し逮捕する見当たり捜査員・白戸。
彼の前に死んだはずの元刑事が現れたことから、警察内部の陰謀が見えてくる。
最も惹きつけられるのはサスペンスとしての筋書きよりも、見当たり捜査のリアリティ。
犯人を見つけたときの主人公独特の「目の奥が弛緩する」感覚、
鮮明な写真よりも不鮮明な写真、リアルな似顔絵よりもポイントを強調した似顔絵のほうが通報率が高まる傾向。
何よりも白戸とその部下2人が、ホシを見つけて「声かけ」し、逮捕(または思い違い)に至るスリリングな描写は密着ドキュメンタリーのように目に浮かぶ。
日本ハードボイルド全集1 死者だけが血を流す 淋しがりやのキング(生島治郎/創元推理文庫)
『追いつめる』で第57回直木賞受賞した生島治郎作品の選集。
「ハードボイルドとは痩せ我慢」と、身も蓋もないことを言われたことがあるけど、生島さんのそれは痩せ我慢ではなく、自分としてのカタをつける、スジを通す男女が主人公。
孤独な選挙参謀だろうと、子どもを育てようと無法に走るチンピラだろうと、売れないジャズシンガーだろうと、だ。
筋を通す生き方がどれほど難しいか、と腑抜けた自分を嗤う。
斜陽の国のルスタン(並木陽/星海社)
宝塚星組公演『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』の原作小説。
13世紀ジョージアを舞台に、強国の侵略に立ち向かう女王への愛を貫いた王配(女王の配偶者)の物語。
文章に漂う折り目正しさもさることながら、原作の並木陽さんが同人から躍り出て、宝塚と繋がりを持つに至るという、人勢を変えたストーリーが好きだ。
あああ、たったこれだけか。
2023年は1冊1冊ずつ、短いメモを挙げますかね(意気込みだけ)。