JR新青森駅から車で10分、青森駅から車で20分。三内丸山遺跡内にある(広大な公園のような)青森県立美術館に行ってきました。
同館のコレクション展(常設展)は想像していたものと違い、アーティストに焦点を当てた内容。作品のバラエティ性ではないのです。
そのアーティストとは奈良美智、棟方志功、小島一郎、マルク・シャガール。日本人作家はいずれも青森県出身です。
シャガールによる舞台背景画
コレクション展と企画展の入口を跨ぐアレコホールは、縦横21m、高さ19mにわたる吹き抜けの大ホール。ここにマルク・シャガール(1887-1985)によるバレエ『アレコ』の舞台背景画4点が展示されています。
『アレコ』は、ロシアの青年貴族とロマの娘との悲恋を描いたバレエで、1942年9月のメキシコ初演ではアンコールが19回にも及ぶ大反響だったとか。
シャガールは舞台美術全般と衣装デザインを担当し、4幕からなる作品に合わせ、4枚の大作(縦約9m×横約15m)を制作。その4点が青森県立美術館に展示されています。
『アレコ』特別鑑賞プログラム
アレコホールでは、舞台用の特殊照明と音楽を用いた約12分の「アレコ特別鑑賞プログラム」 (11時・14時)を毎日上映しています。
第4幕のストーリー解説をCGアニメで行う形式で、これがまた絵画の作品世界にマッチしているナイスな趣向。
シャガールのデザインに近い衣装を身に着けたダンサーの姿をCGで描き起こし、アニメの動きは実際のバレエ『アレコ』の上演風景の資料映像を参考にしたというから本格的です。
システム・照明・音響を手がけた有限会社エボック evokの中村昭一郎さん・野村眞仁さん、動画制作は「ぱやらぼ」葛西薫さんとスタッフ名をクレジットしているのもいい。
奈良美智、棟方志功でおなかいっぱい
同館は青森県出身のアーティストのコレクション展を行っており、なかでも奈良美智と棟方志功はフロアに相当数を充当しています。実際、楽しく見応え十分。
奈良美智の多彩な作品群
こちらを鋭い目つきでガンつけつつ、どこか寂しさを纏っているような子どもの絵が印象的な奈良美智は、弘前市生まれ。同館では、開館前から奈良作品を収集し、現在は170点超の作品を所有しているそう。
それだけに東京の美術館ではお目にかかれない作品が多数。初期のドローイング『天使の家』(1987)から、近年の大規模立体作品『Ennui Head』(2022)まで、アーティストの多彩な足跡をたどれる構成。
展示趣向も凝っていて、注意していなければ見落としてしまうような小作品も。
屋外スペースの『あおもり犬』は行くまでが大変
同館のシンボルである『あおもり犬』(アイキャッチ写真)は、隣接する三内丸山遺跡も制作背景とする大型彫刻作品で、下半身が埋まっているような展示スタイルです。
美術館のガラス越しに観られますが、せっかくですから生で観たい。というわけで、案内表示をもとに「あおもり犬連絡通路」を歩くのですが、これがなかなかたどり着けないw
あちこちを曲がって曲がって、階段を上り下りし、ようやく巨大な、でもやっぱり寂しげな『あおもり犬』にお目にかかると、訪れた人は「おーっ」と例外なく感嘆の声を上げますね。犬を見上げる行為は、たとえ犬の飼い主さんでもあまり無いことで、発想の斬新さも含めて楽しめる展示です。
棟方志功の肉筆画がいい!
青森市松原にあった棟方志功記念館の2024年3月31日の閉館を受け、青森県立美術館が作品所蔵と資料保管を継承。棟方志功の展示スペースを従来の2倍以上に拡張して行う最初の常設展だそうです。
展示室はさすがの気合いの入りっぷりで、新発見や未発表の作品や資料含め、おなじみの版画や書画などがズラリ。しかし個人的に最も魅了されたのは油彩で、「あの棟方の肉筆画」な意外性もあって釘づけになりました。
帝展の初入選を目指して描いていたという初期の作品は、繊細で色彩豊か。全盛期の豪快な大作のイメージがあるので、8号の小品からは出発点となるルーツを垣間見た気がします。
まとめ
同館では当時、鴻池朋子さんの企画展も開催されており、すべての展示作品をくまなく見ると3時間はゆうにかかります。でも、ゆっくり美術に向き合う時間はなかなか割けないですから、いいインプットになりました。
蛇足ながら美術館の内装やタイポグラフィをどこかで見たことがあると考えていたのですが、新宿ピカデリーとそっくりなんですよね。また、スタッフの制服はミナ ペルホネン。美術館そのものも凝っています。(つづく)
#2024年の青森県の旅(2)
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