東京・上野の森美術館で開かれている『ゴッホ展』に行ってきました(~2020年1月13日、兵庫県立美術館に巡回あり)。ポスト印象主義の大家、フィンセント・ファン・ゴッホの画業ハイライトを時系列で目の当たりにできる、良い展覧会でした。
印象派の作品は嫌いではないけど、大好きでもない。そんな距離感なので、常設展でもないかぎりは鑑賞の機会が少ない。ゴッホの画を眺めるのもずいぶん久しぶりです。
ゴッホといえば個人的には「星月夜」や「糸杉」のように、波打つ、うねる筆致のイメージです。しかしその画風は、精神病院への入院など、病と隣り合わせの中で描かれたものなんですね。今回展示のなかった「ひまわり」は、ゴッホが自身の耳を切り落とす1888年12月よりも前、同年8月に創作が始まっています。
病の発症以前と以後で、ゴッホは明らかに作風が異なる印象です。本展では、画家としてキャリア初期のオランダ・エッテン、ハーグ、ニューネン居住時代の作品から、晩年の療養生活までに至るゴッホの足跡をたどる構成。オランダ時代は「疲れ果てて」「ジャガイモを食べる人々」など、人々の暮らしに寄り添うリアルな作品が多く見られます。
フランスに移り住んでから、才能が一気に開花し、「ひまわり」「アルルの跳ね橋」など、心象風景を映したかのような豪快で明朗な作品が生まれていくわけですが、残念ながらこの辺の超有名な作品の展示がありませんでした。もう少し、パリやアルル時代に残した作品を観たかったかな。
とはいえ、出品数約70点のうち、約40点がゴッホ作品。見ごたえのある展覧会であることは間違いなく、ぼくが観に行った平日の午前中でも、展示室の壁沿いに幾重にも人波ができるほどの混雑でした(待ち時間なく入れました)。皆さん静かに絵に集中していて、さほど鑑賞に難儀もしませんでしたよ。