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『解錠師』、影ある青年が人生と生きる喜びを取り戻す物語。

小説『解錠師』

師弟もの&恋愛もの&青春ものなど、いくつもの要素が混じり合ったハードボイルドです。ネタバレなしで振り返ります。

『解錠師』(The Lock Artist / スティーヴ・ハミルトン / 越前敏弥 訳 / ハヤカワ文庫)

あらすじ

幼少時のトラウマで口がきけなくなったマイクには、絵を描くこと、どんな錠でも開けられる才能があった。”ゴースト”という名の金庫破りの弟子となり、芸術的センスをもつ鍵師として、さまざまな犯罪者たちと仕事をしていくが……。

構成と主人公のキャラ設定の妙

金庫破りになったマイクが自らの半生を一人語り(モノローグ)で振り返っていく構成。泥棒のチームに合流するためにポケベルで招集がかかり、ピッキングや解錠で「貢献」していく日常。自分が錠前を開ける才能があると気づき、やがてゴーストに見い出されるまでの日常。そこに、恋人となるアメリアとの出会いが横軸に入ります。

時系列が交互に入れ替わる章立ては少女漫画でよく見られますが、個人的にはこれが苦手。そういう人には一気読みをお勧めしたい。あまり気にせず勢いで読んでしまったほうがスッキリするはずです。

ラノベっぽいカバー画の通り、おまけにマイクは美少年の設定。絵を描けて、無口を強いられるトラウマの持ち主なのに、仕事の現場では肝が据わっている。こんなモテキャラ「いてたまるか」ですが、まぁいいんだよねw

鍵開けの描写

多くの犯罪映画や刑事もので見られるこの手の場面は、監督の腕の見せどころ。シリンダー錠のピッキングや金庫に耳を当てながらダイヤルを回す描写は、画にするほうが分かりやすい。本作は指先の感覚を細緻に再現する文章力と翻訳力が素晴らしい。限られた時間と仲間からの「早くしろ」というプレッシャーに晒されながらの緊迫感は、大きな読みどころです。

師弟ものとして

プロの金庫破りであるゴーストのセリフにしびれます。必要最小限に、でも持てるノウハウや大事なことは漏らさずマイクに授ける。自分の隠れ家で、マイクにダイヤル式の南京錠を開けさせて腕前を観察する場面。総当たりで番号を試していくマイクに呆れ、感じるか感じないかだと言いつつ、

「おれは眠っていてもこれができる。嘘じゃない。車を運転しながらも。電話でしゃべりながらも。セックスしながらも」
さらに少しだけダイヤルをまわし、そこで止めて、もう一度逆にまわす。
「いま言った意味がわかるか。まったく頭を使わずにあけられるってことだよ」

「才能」という意味をこれほど簡潔明瞭に喩えた表現を知りません。個人的にゴーストの放つ数々の言葉と立ち居振る舞いが、物語で最も刺さりました。

アメリカ探偵作家クラブのエドガー賞、英国推理作家協会賞、バリー賞と2011年の長編賞を総なめにしただけある犯罪ノベル。読後感はハードボイルドというよりは、ヒューマンドラマの趣き。主人公と同世代の若い人も引き込まれる作品でしょう。

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hiroki

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