文京区立森鷗外記念館で行われたコレクション展『生誕120年 森茉莉~幸福な日々、書くという幸福~』(2023年7月14日~同年10月1日)に行ってきました。
今年は鷗外の長女、森茉莉(1903〜1987)の生誕120年。森茉莉といえば、おしゃまな幼年期からおしゃれな随筆家になったいうイメージですが、実際にこの展覧会を見終わると、類まれなセンスの持ち主だとわかります。
女性が出てくると蔑まれることも普通だった時代、自己肯定感の塊のよう。そのセンスが醸成されたのは「お茉莉は上等」と鷗外から褒められ、慈しまれたことと無関係ではないでしょう。
展示は鷗外が日露戦争の出征先から送った家族宛の手紙、茉莉の直筆原稿や著作物などから、茉莉の公私を振り返る内容。茉莉の直筆原稿もありましたが、その原稿用紙の体裁でも読ませてしまう魅力があります。
鷗外の子どもたちは、茉莉に限らず皆が鷗外との思い出を語っています。凄いのはそれぞれ「自分が最もきょうだいの中で愛されていた」と振り返っている点。
そう思わせた鷗外の公平さと巧みな育て方ね。
作家として大成し、育児も見事。嫌になるほど完璧ですが、子どもにはそれくらい溺愛してちょうどいいのかもしれません。