名古屋・松坂屋美術館で開かれている『コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画』展を観に行ってきました(2023年9月23日~同年11月19日)。
キャバレーのボーイから立身出世し、実業家として財を成した福富太郎さんは、一方で鋭い審美眼の持ち主だったそう。
福富によって選ばれた、日本画から洋画に至るまでの多彩なコレクション80点が展示されています。
肝心なのは福富が「画家が有名だから」「作品が高く売れそうだから」「所蔵が自慢になるから」と言って絵画を収集しているのではなく、自分の「これ好き!」という直感と審美眼を拠りどころにして購入していたところ。
しかも単に買って終わりではなく、気に入った作品については購入後、徹底的にリサーチ・研究していたとか。
したがって有名画家はもとより、決してメジャーではない画家の作品も展示されています。
展示の最初に、福富が最も愛着を持っていた鏑木清方の作品群が。
鏑木の「薄雪」や「妖魚」といった作品を初めて目の当たりにしましたが、やはりいいねぇ。
作品の消息不明で、持ち主が福富と知った鏑木が「展覧会で貸してほしい」と依頼してきたときには「誇らしい気持ちになった」という述懐、コレクター冥利に尽きますね。
個人的には鏑木作品のほか、満谷国四郎の「軍人の妻」という静謐で悲しみに満ちた作品に長らく足を止めて見入りました。
福富さんという人は、そのルックスからして福々しい方ですが展示品の大半が「美人画・女性画」でした。
ほんとうに女性(の画)がお好きだったんだな、と。
ビジネスの才覚だけでなく審美眼も併せ持った人物でありコレクター、現在の市井にもいてほしいな。