ピュアである、心を病んでしまうほど鋭利で繊細な感覚になったからこそ描ける、築ける。
そんな美術作品が集った『ポコラート世界展 偶然と、必然と、』(〜2021年9月5日/アーツ千代田3331 1階メインギャラリー/入場料一般800円)を観に行ってきました。
毎年アーツ3331で開かれているポコラート展、今回は世界22カ国から作家50人の240点あまりが展示されています。
入場するとすぐ、いろんなコスプレをしたオジサンのセルフポートレイト集の大判はトマシュ・マフチンスキさん作。
森村泰昌さんの作品を彷彿させるインパクトがあります。
五線譜かパラグラフの線画か、その細緻な線の上に手紙文をしたためたハラルト・シュトファースさん。
ひたすら割り箸を立て、束ねていき、ひとつの塊にした武田拓さん。
個人的に気に入ったのは、ジョージ・ワイトナーさんの作品。
過去の日曜日に起きた航空機墜落事故の日付・発生場所や飛行機の名称を記した、その名も”Sunday’s Crash”には恐怖を覚えたほど。
サヴァン症候群にかかっているらしく、震えた文字が幾重にも描かれている図は、映画『セブン』のタイトルデザインを思い起こさせました。
想像上の都市の中に、ひたすら建物や道路を描き込んでいるのは古久保憲満さん。
古久保さんの作品を直に見るのは2回目で、昨年の藝大美術館での展覧会以来。
この都市に密林を描いたかのようなカオスっぷりが最高です。
展示最終盤にあった鶴川弘二さんの絵画(というよりデザインに近い)は、白いキャンバスに赤色の丸ドットを展開させ、文字を書き込んだもの。
「ぬくい」「なおしまんねん」「おんなわなくもん」などは、どうやら母親らしき人の小言や口ぐせらしく、それらの文字がつれづれなるままに描かれています。
勝手な印象ですが、朴訥としたタッチで、今回の展示の中で最もホッとした作品です。
障害があるから、精神不安定だから、日常の細かい積み重ねがいつしか作品となる。
ここに展示されたのはごく一部で、家族や施設の人に見つからないまま眠っているアートは、まだまだあるはず。
仮に見つかったとしても、価値を見い出されずに処分されてしまうものもザラでしょうね。
こうして展示されて日の目を見る作品に、もっと出会えますように。