初めて対面する、初めて体験する、初めて使う。
出会いとは人と人との話だけでなく、モノにしてもコトにしても同様。
「遭遇するタイミング」ってのがあるわけで。
自分の例に置き換えてみると――。
たとえば落語。
20代のころ、当時のクライアントである雑誌編集者から「文章を仕事とするなら、落語を聴きなさい」とさんざ勧められたものの、結局は乗っからなかった。
どうしても興味が持てなかったんです。
30代後半になって、寄席にようやくポツポツ足を運ぶようになり、気がついたらハマっていた。
あのとき編集者のアドバイスに従っていたら、古今亭志ん朝さんの高座を目撃できていただろうに。
今さら悔しがっても遅いんだけど。
たとえばBARやウイスキー。
新卒入社してまだまもないときから、先輩ライターに新宿ゴールデン街の行きつけの店に連れて行ってもらったけど、そのときはBARもウイスキーも価値を全然理解できなかった。
先輩はバーボンのオールドフォレスターをボトルキープしていて、決まってロックで。
ぼくは水割りがやっと。
「よく、こんな強い酒が飲めるなぁ」とそのときはお付き合いしながら呆れていました。
まさかその20年後に自分がハマるとは。
BARも酒も、禁煙したことがきっかけなだけなんだけどね。
若いときに出会っていたものの、ピンとこない。
そこから年月を経て「良さが分かる」ようになる瞬間が現れるんですよね。
今の若い人が、果敢にいろんなチャレンジ(というと大げさだけど)をしているのを見ると、大したものだなと感心します。
カネと時間と好奇心の許す範囲で、フットワーク軽く試している人を見ると、なんだか眩しいね。
齢50を超えたぼくなどは、とりあえず「食わず嫌いはよそう」くらいなマインドです。
推し活ですら腰が重いときがありますから、新しい体験ともなればなおさらエネルギーが要ります。
公私ともに、できるだけ新しいことを少しずつでも摂取していくのが大事ですな。