宇都宮美術館のエントランスに着いたのは14時04分。ラッキーなことに常設展のほうでギャラリートークが始まったばかり。迷わず参加です。
宇都宮美術館
ギャラリートークもいろいろありますが、ここでは学芸員さんが美術館収蔵のコレクションの一部を、作品の前で解説してくれます。
抽象画の草分け的存在のカンディンスキー、アール・ヌーヴォーの代表的芸術家ミュシャ、新宿中村屋サロンの中心人物である中村彝の作品など、19世紀のアーティストの作品が多数所蔵されている印象です。なかでも興味深かったのがフランスの画家ビゴーの作品。
これは鑑賞者向けのカードで、学芸員さんもこの絵の前で解説してくれました。ビゴーは1882年から1899年まで日本に滞在。もともと浮世絵を学ぶために来日し、近代化を進める日本の様子を風刺画という形で残しています。宇都宮美術館の今回の常設展では日本の家族の日常生活を切り取った絵画が20点ほど展示されていました。
愛らしさと郷愁を感じさせる絵の数々。この作品の、船に寄りかかっている白い帽子の人物はビゴー本人とか。他にもこの帽子を被ったビゴーらしき人物の絵が展示されていました。たびたび展示替えを行っているそうですから、また是非行きたいです。
ちなみに宇都宮美術館は、26ヘクタールにもわたる広大な公園施設の中にあって、駐車場からエントランスへのアプローチだけでもマイナスイオンをたっぷり浴びている感があります。散策にもおすすめです。
栃木県立美術館
お次は作新学院近くにある栃木県立美術館へ。こちらは常設展には時間切れで行けず、企画展のみ。
3Dプリンターという技術革新をモチーフに、さまざまな作品の価値可能性を探ろうというもの。ぼくのお目当ては、大ファンである福田美蘭の作品。今回のテーマにうってつけのアーティストです。
このチケットに採用されているのが、美蘭その人の「ルノワール“日なたの裸婦”」(1996年)という作品です。これ、いってみれば模写ですが、全部微妙に異なるのが分かりますか? 模写からここまで広げられるアーティストは他にいません。模写も着想次第で自分のものになるんですよね。
美蘭は他にもそういう作品を多数発表しています(大原美術館で見た「安井曾太郎と孫」の衝撃は忘れられない。仰天のち大笑い必至の絵です)。
この展覧会は他にも草間彌生、横尾忠則、森村泰昌の作品がそれぞれ複数展示されており、なかなかの見応えでした。気づけば閉館時刻で、常設展を見られず時間切れ。また来よう。
まとめ
- 宇都宮の美術館は二つ。宇都宮美術館、栃木県立美術館どちらも行く価値あり。
- 美術館でのギャラリートークには参加すべし。思わぬ発見が得られる。
- 旅先に美術館があれば訪問の予定に入れる。思わぬ拾い物に遭遇する。
- 福田美蘭は本歌取り、換骨奪胎の天才。最高に冴えたアーティストである。