旅先でちょっと勉強になることがありまして。
駅前ロータリーを離れて目抜き通りを歩いているとき。アジア系の、若い(たぶん20代)外国人留学生らしき女性が「すみませーん」と小声で話しかけてきた。
道でも聞かれるのかな。「はい」と応じて歩みを止めたところ、そうではなかった。
彼女は手提げ袋に入れた板チョコを見せながら、こんな話を始めました。
自分は留学生で、この不景気によってバイト先をクビになり、 仕事を探しているけど見つからない。このままだと学費が払えず国に帰らなければならない。だから500円でこのチョコレートを買ってほしい。私に善意をくれないか。
こんなようなことです。
一瞬、「それは大変だ」と同情したものの、カネをせびられたという事実が、ぼくを虚無化しました。
悪いけど協力できない。仕事見つかるといいね。
と言い残し、その場を離れました。
なんだろう。詐欺の手口っていろいろあるけど、今回のこれって少額の寸借詐欺よりもタチが悪い。下心を取り込むのではなく、人の善意に付け込むやり方だからね。立ち去って歩きながら、なんだかムカムカしてきました。
声をかけてきた彼女、あなたの仕事は路上に立って、いかにものナイスガイをたらし込むことではない。
こういう声掛け事案をやってる彼女とか、都内電車の駅改札付近で「困ってます」と書かれたダンボールの切れ端を抱えて座り込んでいる若年男子を見ると、「しっかりしてくれ!」と叱咤したくなる。
あなたの弱さを否定するものではない。俺も弱い人間だし。こんなことしている時間があるなら、さっさと仕事を探そう。併行して救済措置を調べて自治体に駆け込むとかしよう。大事なのはそこ。
……なぁんてことを言おうもんなら、向こうがその場を離れてしまうのだろう。「めんどくせぇおっさん」と舌打ちされて。
別に説教したいわけじゃない。単にムダに抱え込んで苦しんでほしくないだけ。必要な支援を受けながら稼ぎ口を探せばいいじゃんか。
そちらのほうが近道だと、どうやれば伝わるのだろうか。