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『23分間の奇跡』:いかなる警戒も解くマインドコントロールの怖さ。

『23分間の奇跡』

どのような初等教育がなされるかで人間の基礎が決まるのは必定。
それがあらぬ方向に行きすぎると、なかには偏った思想を持つ人が出てしまいます。中国や北朝鮮の例を引くまでもなく。

敗戦国の教室にやってきた新しい女性教師が児童に施す23分の初授業を描く『23分間の奇跡』(The Children’s Story…/ジェームズ・クラベル著/集英社文庫)は、教育やマインドコントロールの怖さを感じさせる短編小説です。

あらすじ

ある小学校に、それまでの教師に代わり新しい女性教師がやってくる。時間は午前9時。新しい教師に警戒心を募らせていた子どもたちに、教師はどのように最初の授業に臨むのか――。
少しのヒントもなく、まっさらの状態で読書に入ってほしいので、ネタバレはしません。
詳細なストーリーを結末まで知りたい方はウィキペディアにどうぞ。

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23分間の奇跡 – Wikipedia

なぜ手にしたのか? 読後感は?

「あっという間に読めるので、今読んでるやつを中断しても大丈夫」とお勧めされたからです。
加えて「怖い話」とのことで、ひじょうに魅かれるものがありました。

本作の「空気」が表面上は穏やかなのは、児童書のように「ひらがな」を多用している影響もあるでしょう。
でも全編どこか不穏な空気が文字を通して漂っています。
教育って怖えぇ..んだけど、真の怖さは当事者に疑問も抱かせず、自覚すらさせない洗脳……もといマインドコントロールです。
そう、教師がいかなる脅迫も暴力もなく、子どもたちが「自分たちで決めて、納得する」ように仕向けていく教師の戦略と機知は、読み手に絶望感と無力感を植え付けます。
マインドコントロールの怖さよ。

この文庫版の表紙の、見た目の児童書っぽさがまた怖さ増幅。
読後感を書いてしまうとネタバレになってしまうのもつらいな。
しいて言えば、「自分の頭で考えているつもりでも、それは誰かの影響を自然と受けているのでは」という常なる視点が必要だな、と。

読んで得たこと

  • 訳者の青島幸男(!)のあとがきの「問題提起の書」という解説に納得し、うなだれる
  • 微かな違和感を大事にしたいし、その違和感はたいてい合っていて、正しい判断をもたらす
  • 与えられたもの(Aプロ)のみで判断せず、Bプロ・Cプロという第二・第三の道も探ること

まとめ

原作は単発テレビドラマ『世にも奇妙な物語 冬の特別編』(1991年・フジテレビ)の、エピソードのひとつとして映像化されていたの、知りませんでした(主役の教師を演じるのは賀来千香子)。

余談ですが、ジェームズ・クラベルの別の小説は、Disney+で配信された真田広之主演のドラマ『SHOGUN 将軍』の原作(1975年)にもなっています。これもまた知らなかった。

物語から何かを考えさせられる、そんな作品が好みのひとつでもあるのだなと自覚した一編でした。
30分もあれば読めます。

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