「ウイスキーマガジン・ジャパン」の編集長で、ウイスキーライターとして高名のデイヴ・ブルームさんの『ウイスキーバイブル 本当のたのしみ方を知りたくなったら、この本からはじめよう』(日本文芸社)を読了しました。いやはや、これはウイスキー愛好家必読の書です。ご同輩にぜひ一読を勧めます。
本の表紙にもあるように、これはウイスキーファンのみならず、これからウイスキーを楽しみたい人に向けての「マニュアル」と著者が位置づけています。といっても、いわゆる専門書や手引書の類ではありませんのでご安心を。
何が面白いか。
デイヴさんは、102種類ものウイスキー(スコッチのブレンデッド、スコッチのシングルモルト、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、日本&台湾の中からセレクト)を6通りの飲み方でためして、5点満点で「評価」したのです。
6通りってなんだと思います? ロックかな、水割りかな? トゥワイスアップ? それともミスト? いえいえ、これがビックリ。
ストレートでのテイスティングに始まり、
ソーダ水、ジンジャー・エール、コーラ、緑茶、ココナッツ・ウォーター。これが6通りです。コーラまでは理解できますが、緑茶、ココナッツ・ウォーターはもはや蛮勇を振るう域では? フツー、それで割らんでしょう。
割り材(銘柄を固定)とウイスキーの比率は2×1で、氷を入れるのが条件。
本は1Pにつき1本(1銘柄)でスペースを割き、ウイスキーのテイスティングノートと解説を経て、これらの割材でミキシングした所感が記されています。
5点満点と言いましたが、最強の組み合わせには「5★」を、反対に全く向かないという組み合わせには「×」を付与。けっこうガチです。
が、意外や意外、緑茶やココナッツ・ウォーターで「5★」をゲットする銘柄が、ごくわずかにあったんです。そのウイスキーは? 読んでみてください。日本人におなじみな銘柄もありました。
好感が持てるのは、これらの壮大な実験を、飲み手の手の届く、つまり酒屋さんで買えるウイスキーで試していること(日本ではあまりメジャーではないウイスキーもありますが)。プレミアムな銘柄や値の張るヴィンテージものではテストしていません。
裏側には、これが飲み手の間口を狭くしているという、著者の痛烈な批判精神があります。ウイスキーは「ストレートで飲まねばならない」という迷信というか、愛好家の間でのアンリトゥン・ルールを全否定。
一部の愛好家だけでなく、誰もが「とにかく楽しく飲む」ことを前提として書かれている本です。だから「周りの酒飲みとちょっと違う、ウイスキーにちょっと興味のある若い人」にはもってこいの本です。はい、前述のご同輩だけでなく、20代に読んでほしい。
ついついストレートで。そんなふうに思ってしまい、実際テイスティングしていますが。こういう飲み方があったのだと、目からうろこでした。しばらく枕元に置いて愛読します。