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『春陽会誕生100年 それぞれの闘い』:自由な気風と、画家の主張・対立と。

『春陽会誕生100年 それぞれの闘い』

長野県立美術館『春陽会誕生100年 それぞれの闘い 岸田劉生、中川一政から岡鹿之助へ』観覧。

「春陽会」とは1922(大正2) 年に発足し、現在も存続している洋画団体。
小杉放菴、山本鼎、森田恒友ら日本美術院洋画部出身の画家と、草土社の岸田劉生、木村荘八、中川一政らを中心に設立。画家の個性を重視する自由な気風で、本展でも油彩をはじめ、水彩画、版画、水墨画、新聞挿画など約200点が紹介されています。

なぜ観に行ったのか? 鑑賞後感は?

東京在住の身で、旅先での美術館立ち寄りは必ず日程に入れているんですよね。
都内の美術館はどこも混雑していて(おまけに部分的にでも撮影可としている展覧会も珍しくないものだから)困りものですが、今回は久しぶりにゆっくり鑑賞できました。

春陽会の歴史を時系列で見せているのだけど、そうなると構成の横軸が画家同士の対立になるのがユニークだな、と。
キャプションによると創立期の中心メンバーだった岸田劉生は同人内で尊敬を集める一方で、どの画家の作品も岸田の絵のように暗いと揶揄されることがあったらしく、岸田の陰口をたたく画家もいたそうで。
そんな空気を察してか、3期務めた後に岸田は脱会。その責任を負う形で岸田を会に推挙した梅原龍三郎も辞めてしまいます。

なんだろう、素人目線で春陽会の画家さんを見ると、岸田以上に抜きん出た人って、誰かいます?
まぁ岸田劉生という人は妻への振る舞いなど今で言うモラハラ的な気質があったそうですが、この時代は許されていたし、実際に才能があったわけで、これは仕方のないこと。
失礼ながら相当嫌なヤツだったと想像できますので、周りが嫉む気持ちは分からないでもない。
一人のカリスマが組織やグループを引っ張るのは、どの世界にあっても共通するようです。

どの作品が良かったか

「自画像」を通して三岸節子という画家を初めて知りました。
なんたる美人で強そう、というかはっきりとした主張に溢れた顔つきにやられちゃった。
女子美を首席で卒業し、在学中に知り合った天才画家・三岸好太郎と結婚するも死別。
とてもドラマティックな人生だったようで、後付けな感想ですが、この自画像からはその後の波瀾万丈にも動じないであろう不敵さを感じました。

東京国立近代美術館所蔵、木村荘八による『墨東綺譚』(永井荷風著)の挿絵も、味が感じられます。
この時代の空気感が伝わってくる不思議さ。

他方、正直、岸田や萬鉄五郎の作品は食傷気味です。

まとめ

本展は200点もの展示作品数ゆえ、リニューアルして面積が改修前の2.5倍=1万2000平方メートルにもなった長野県立美術館でさえ、2フロアを使っての構成。
キュレーターさんも配置にひと苦労だったかと想像します。

著名画家もさることながら、知らない画家を見聞できる展覧会は大事にしたいですね。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性