「新作落語の会」(2024年6月30日13時30分開演/かめありリリオホール)。前座の東村山さん、喬太郎さん、青森さんと、歌唱も炸裂する高座。
いささか疲れました。いいんだけどさ、面白いので。
CM家族 東村山
ロマンス恋泥棒 白鳥
サニーサイド 喬太郎
仲入り
バスルーム心中 青森
神々の唄 彦いち
「CM家族」三遊亭東村山
特定の語を耳にすると、CMソングを歌わずにいられない病に罹患した妻。
夫が口にした何気ない一言で「痔にはボラギノール」「富士サファリパーク」などを歌いだし、明らかにテレビの見過ぎらしい症状を露呈している。
しかも医師によるとこの病気は感染してしまうそうで、夫や娘など家族にもその兆候が……という噺。
座布団の上に寝そべって転がるアクロバティックな高座は、師匠・白鳥さん譲り。
広告を題材にしているのだけど、ストーリーはシュールで、これも師匠の影響でしょうか。
CMを見ている人には面白さがわかるんだろうけど。個人的には最近民放テレビ番組をめったに視聴しないので、ややつらかった。
「ロマンス恋泥棒」三遊亭白鳥
THE ALFEEのライブに行き、会場で「初めての客」ということで大歓迎されたエピソードを嬉々として語りだす白鳥さん。
初めてのお客さんも大事にしなきゃと。
「ロマンス恋泥棒」は、売れっ子ベテラン少女漫画家の先生が国際ロマンス詐欺に遭う噺。
ロベルトというイケメンとメールでやり取りしているとときめく漫画家に、原稿を取りに来た編集者は「それは詐欺だ」と諭す。
編集者のしつこい警告に、漫画家はついに堪忍袋の緒を切らす。そこには漫画家の深謀遠慮と、老いへの恐れがあったのだ。
漫画家が思いをぶちまける後半は、感情がウワッと。サゲへの急展開も見事。
白鳥さんオリジナルかと思いきや、まさかの春風亭昇太作。びっくり!
「サニーサイド」柳家喬太郎
亀有駅前の立ち食いそば屋さんのカレーの話などあって。
社内プロジェクトのイベントを成功させた部下の男女を自宅マンションに招いた部長。ねぎらいと飲みにケーションの一環らしいが、なんとこの男女は近々結婚するという。
のり弁当をバラバラにしたような奥さんの手料理に喜ぶ二人。マンションを褒めてくる二人に、自分の生い立ちを語りだす部長。
ふたりは部長と奥さんのなれそめも聞く。作ってくれた目玉焼きがうまかったからだという。それまでは小学校の家庭科で女の子が作ってくれた目玉焼きが一番だったが、その女子の名前が思い出せない……。
懐かしのカーケシ(スーパーカー消しゴム)遊びでウルトラマンのポインターを出してきたり、『デビルマン』を歌いだしたりと、趣味全開の趣は喬太郎さんならでは。
客がどう反応しようが知ったこっちゃない、その振り切り方がまた爆笑を呼び起こす。
まさに一人芝居であり、喬太郎自身が「柳家喬太郎を当て書きで演出する演出家」なんだなと、つくづく。
「バスルーム心中」三遊亭青森
白鳥さんの弟子は皆さん鬼才ばかり。
青森さんもその一人で、この「バスルーム心中」はシャンプーとコンディショナーの甘いやり取り(?)が延々と続く、これまたシュールな噺。
キテる、キテるとしか言いようがない。
「神々の唄」林家彦いち
自分を大きく見せたいがために、つい嘘を口にしてしまう癖のあるゲンちゃん。
町内会のお祭りで歌手の「スーザン・ボイルを呼べる」と大口をたたき、できもしない約束をしてしまう。
困り果てたゲンちゃんは、妻にスーザン・ボイルに変装してくれるよう懇願する。
虚言癖が治るよう八幡様にお参りしていた妻だが、しぶしぶ承諾してイベントに出る。
ところが、訛り全開のステージが評判を呼び、あちこちのお祭りから声がかかり始め……。
「神々の唄」これで2度目。新幹線の切符売り場で嘘をついたという懺悔のまくらは、何度聞いてもハラハラします。
まとめ
「新作落語の会」楽しいのですが、正直かなり疲れますw
今回も仲入り前の3人で十分、元を取れた気が。
客席は大入りで、落語ファンの幅広さに感心させられます。
しばらく新作はいいかなってほどおなかいっぱいになりました。