ん? 三三さんも落語界においては若手だろ、ってなツッコミはさておき。
新作から古典まで、確かに気鋭の注目株が集った会。
そんな中にあって、最も目を引いたのは二つ目のぐんまさんなんだよな。
土底の英雄 ぐんま
匙加減 わん丈
夢八 㐂三郎
仲入り
漫才 ロケット団
青菜 三三
2024年8月3日14時開演
サンパール荒川 大ホール
「土底の英雄」三遊亭ぐんま
「どていのヒーロー」を読ませる演題で、これはモグラのこと。
箱根の山を隔て、東京と神戸のモグラが縄張り争いをする奇想天外な噺。
古典落語の趣で始まったと思いきや、帯の結びから扇子を3つ取り出し、モグラの爪に見立てる芸の細やかさ(豪快さ?)。
まさかの羽織の使い方で、モグラの頭領を表現する場面などは、師匠である白鳥さんの影響を感じさせずにいられない。
喬太郎さんをして「白鳥師匠の秘蔵っ子」と言わしめた人で、要するに折り紙付き。天性の落語センスを具えているんでしょうね。
高座を下りて前座仕事に切り替わる際も、めくりを変えるときに客席を見て軽く手なんざ振っちゃって、それが全然イヤミにならない。
個人的に二つ目で最も注目しています、ぐんまさんは。
「匙加減」三遊亭わん丈
「なぜイケメン落語家枠に入らないの?」というファンのツッコミに対する答え方からの、時代劇のイケメン=大半が加藤剛を想起する大岡越前の政談。
品川の芸者と深い仲になった元益。医者の息子である彼は、入れあげるあまり父親の書物を質入れして勘当されてしまった。
心を入れ替えた彼は、開業医となって働き始める。元より腕はいいので家計は持ち直し、ついに芸者を料理屋から身請けしようとするが、芸者は元益と会えないことで気鬱になって屋内の座敷牢にいるという。
主人の求めに応じ、3両で身請けした元益はたった半年で芸者の病を治してしまう。
これを知った主人は、年季証文を取り交わしていないことを逆手に取り、再び芸者として彼女を働かせようとする。
大岡裁きの場面に行き着くまでが長いことを弄るわん丈さん。
それまでが軽快でしたから、あっという間でしたよ。
「夢八」柳家㐂三郎
かつてサンパール荒川の近くに15年ほど住まっていたことを話した㐂三郎さん、落語の世界を地で行く雰囲気がまたよろし。
今日は怖い話をとのことで怪談かと思いきや、首吊り死体と一夜を明かすことになった若い衆さんの噺。
この演目、一之輔さんが一時よくかけていて、梁にぶら下がった死体を表情豊かに演じたインパクトがなかなか。
個人的には㐂三郎さんの表現くらいでちょうどいいな、と。
「青菜」柳家三三
高崎線でおなじみ、籠原での落語会終わりで駆けつけ、ややお疲れ気味。
「青菜」は初夏から今に至る時期にかけられる人気演目ですが、三三さんで聴くのは初。
いろんな噺家がいろんなアレンジで演じていますが、三三さんのそれは標準版といえるもので、安定安心。
本寸法が型になるって、案外稀有なのかもしれませんね。