ノンフィクション作家・神山典士さんの新著『成功する里山ビジネス~ダウンシフトという選択』(角川新書)の出版を記念し、勉強会を開催しました。
神山さんはサンデー毎日で現在「下山の時代の仕事術」を随時連載中です。”下山”とは今そしてこれからの日本が迎える人口急減時代を間接的に表したもの。頑張っていれば皆が経済的に豊かになった高度成長期のような成長モデルはとうに終わっているのに、人も企業も社会も、従来の価値観から抜け出せていない。
少なくなる一方のパイをまだ争奪し合うのか。会社員として長時間拘束されながら「安定した生活」なる砂上の楼閣を望むのか。都会の便利な生活にまだこだわるのか。
ぼくの好きなミュージカル『コーラスライン』のクライマックスの一場面。かつての恋人である演出家のオーディションに参加した元スター女優が、こう言い放ちます。
「もっと上へ、もっと上へ。それは病気よ」
神山さんは、売上至上主義、利益追求といったひたすら上を目指すような従来の手法にとらわれず、新しい生き方を実践し始めた人たちを取材し、つまびらかにしています。
- 人口1万人の街に年間120万人が訪れる長野県小布施町の地域資源活用戦略
- 被災地であえて演劇ワークショップを行う演出家
- 田舎では「労働」、都会では「エンタメ」。その気づきで移住して年収400万円増
- 子ども、家族との時間。お金よりも大切なものを問う池袋のダウンシフター
- 「教育の魅力化」をうたい、今や全国から優秀な子たちが集まる島根県の海士町
- 国際芸術祭で若者が集まるようになり、高齢者が活力を取り戻した香川県の小豆島町
- 大手ゼネコンを退職し、古民家再生で町おこしを行う福岡県福津市「津屋崎ブランチ」代表
神山さんは別に稼ぐ・儲けることがダメ、一億総ミニマル化せよなどと主張しているわけではありません。その方法や手段として、もっと違うやり方があるのではないか。いつまでも上り列車にこだわらず、価値観を真逆にし、下り列車に乗った先にある未来に目を向けて発想転換せよ、というわけです。
勉強会には日本のこれからを担う大学生も来てくれました。神山さんはそんな学生たちに、「たとえば『流通の問題点に着目し、大手スーパーチェーンでその問題解決のために働きたい』というなら話はわかる。しかし、『大手スーパーでどこそこ支店に配属されて、安定的に働きたい』というのは違うだろう」と問います。
「仕事とは探すものではなく創るもの」
「課題あるところにビジネスが生まれる」
「もっと上へ」……。何をもって「もっと上」なのか。まったくもって自分自身にも突き刺さる勉強会となりました。
2部制にしていましたが、あっという間に満席になりびっくり。神山さんと高坂さんにご協力いただき、21時30分スタートの第3部も行いました。このふたりの著者の元に集まる方は、進取のマインドに相当富んだ方だと思いますが、参加された皆さんの熱気は想像以上でした。この勉強会、何らかの形で「続編」を行います。近々また告知しますので、ぜひ期待して待っていてください。