東京・上野桜木の藝大美術館で開かれている130周年記念展覧会を観に行ってきました。全部が目玉といってもいいくらいの名品ぞろいでしたが、なんといっても現代画家たちの自画像に心動かされました。ぼくが大ファンで追っかけている福田美蘭、山口晃の自画像が見られてうれしい、うれしい。
ここは常設展を行うことが少なく、大学ゆかりの企画展を催すことが多いです。が、たまにはこうして美術館の実力を見せたほうがいいし、見せないのはもったいない。教科書や切手でおなじみの所蔵名画がズラリ並ぶと、「おーっ」と驚嘆してしまうもの。
この展覧会はざっくりと「名品編」「平櫛田中コレクション」「卒業制作ー作家の原点」「現代作家の若き日の自画像」「真似から学ぶ、比べて学ぶ」「藝大コレクションの修復ー近年の取り組み」などに分けて構成されています。第1期の展示は2017年8月6日(日)で終了。展示替えして8月11日(金)~9月10日(日)まで第2期が開かれます。
古くは江戸期の伊藤若冲、鈴木春信。明治期の黒田清輝、横山大観。昭和期の小林古径、小倉遊亀、果ては直近の卒業生。レジェンドから期待のアーティストまでバラエティ豊かでしたが、なかでもぼくが心奪われたのが「自画像」です。
藝大で美術を学ぶ学生は、卒業時に学部生は卒業制作、院生は修士制作としてそれぞれ集大成となる作品を仕上げて先生方の採点を仰ぎます。それとは別にもうひとつ、卒業生のすることが自画像の提出です。
この展覧会では30人の自画像が展示されていました。さほど古い画家の作品は展示がなく、今回は昭和54年以降に描かれた自画像です。千住博、福田美蘭、村上隆、会田誠、山口晃、松井冬子……。アーティストの瑞々しい感性が伝わってきます。
福田美蘭とは目が合いました、絵を通して。見るぼくの内面まで射貫くような眼光の鋭さ。頼朝像な山口晃、人を食ったような会田誠(検索しても出てこないのが残念、お見せしたい)、不安げな松井冬子。なんでこうも自画像に魅了されるんだろう。1回こっきり、まさにそのときだけの内省の瞬間を見るからか。鑑賞者まで飲み込むような才気とエネルギーに満ちているからか。
10年前の2007年、同美術館で開かれた藝大120周年の記念展はこの「自画像」だったんです。NHKの単発番組と連動した企画で、その番組もまた素晴らしかった。何人かの卒業生に制作当時を回顧してもらったり、今は亡き画家の絵に込められた画家の思いをひもといたりする構成が面白かったです。なかでも松井冬子さんは夜の墓地に、灯したロウソクを携えながらしずしずと登場。自分の見せ方を分かっているなと舌を巻きました。
この番組、NHKアーカイブに行けば見られるんだろうか。