2025年の落語締めくくり。翌日と翌々日のホール落語会は個人的にはおまけみたいなもので、気持ちは今松さんで聴き納めです。
赤坂倶楽部師走公演 むかし家今松の会
阿武松 枝次
二丁蝋燭 今松
仲入り
芝浜 今松
2025年12月19日18時45分開演 赤坂会館6F稽古場
正統で(アレンジが過ぎず)、笑うところは笑え、聴きどころは聴ける。そんな落語が個人的には好みで、現役の噺家でいえば今松さんなわけです。
というか今松さんを初めて聴いたときに「しっくり」きたのです。初めて聴いたときの衝撃とか驚愕とかではない、長年のキャリアによる落ち着きゆえでしょう。
当たり前ですが、ドッカンドッカン受けてスピードもある一之輔さんとも、自身のキャラクターを生かしたユニークなアレンジを施す白酒さんとも違う。
ゆったり飄々とした語り口が「ならでは」で、要するにホッとするし安心するんです。
さて会場で受け取った案内でネタ出し2席と知り。
『二丁蝋燭』は商家のドケチな主人の噺。妻の実家で開かれた宴席の帰りがてら、丁稚定吉に「蝋燭を忘れた」と一芝居打たせて蝋燭をせしめようとするも、定吉は蝋燭ではなく提灯を忘れてしまったというサゲ。
ケチが主人公の噺では枕詞として同意語が紹介されますが、どれも言葉の様子がなんかいいんですよね。
しわいや、吝嗇、赤螺屋、六日知らず……。
今松さんが自説として「爪に火を点す」の由来を紹介してからの入り方も巧み。
休憩を挟んでの『芝浜』は、現在の定番となっている「ちょっとおまいさん、起きてちょうだい」とおかみさんが夫の魚熊の身体を揺する始まりではなく、師匠である先代の金原亭馬生の形で、と。
今の定番との細かな違いを終演後にメモったのだけど、適度に削ぎ落とされている引き算の印象で、原点を見る思い。
それよりも驚いたのが今松オリジナルのサゲ! これがまた気を衒わず自然なんですよ。
改変には案の定いろいろな反響があったらしいですが、「この形でこれからはやる」と宣言。
今松さんは真相を知った魚熊が妻の勧めで酒を解禁しようとするも「また夢になるといけねえ」=飲もうとしてこれから先ずっと飲まない、というサゲに納得いかず思い切って変えたとか。
酒飲みのワシとしては納得の終わりで、ホクホクニンマリ。いい会でした。
それと二つ目の春風亭枝次さんの『阿武松』がけっこう聴かせたことを申し添えたい。
百栄門下というと強烈な印象ですが、堂々たる語り口で声も聴きやすい。この噺、今松さんに教わってたりしたのかな。
