上野鈴本演芸場2025年6月上席夜の部、むかし家今松さん主任ネタ出し公演「梅雨時に聴く今松噺十選」。三日目に伺いました。
(途中から)
蔵前駕籠 龍玉
ものまね 猫八
質屋庫 今松
『質屋庫』むかし家今松
質店にお化けが出る噺。
- ある質屋の主人が、自分の店の三番蔵にお化けが出る噂を耳にし、その真偽を確かめようと番頭に指示するも、暇乞いされてしまう。
- 主人は番頭に三番蔵のお化けの正体は「質入れ品の気」と言い、「呉服屋の訪問販売が見せてきた着物の帯を6円で買った女房が、結局主人の3円の用足しで質入れされてしまい、請け出せぬまま病気にかかり『悪いのは質屋』と怨まれるようなもの」との小話を聞かせる。
- なおも怖がる番頭は、助っ人として腕っぷしの強い大工の熊五郎を呼びたいと提案し主人も了承する。その話を立ち聞きしていた丁稚の定吉は、主人の命で呼びに行った熊五郎に「主人がひどく怒っているからすぐに来て」と煽り、怒りの理由を聞きたがる熊五郎に芋ようかんを奢らせた挙げ句、そそくさと立ち去ってしまう。
- 質屋の出入り職人である熊五郎は、主の怒りに心当たりがあった。お店に着くなり地酒・たくあん・下駄などを持ち去っていたことを次々に白状し、主人を困惑させる。呼び出しの意図を聞かされた熊五郎も実は怖がり。「いったん帰って考えさせてほしい」と懇願するも主人にきっぱり止められ、番頭とともに蔵の向かいにある離れで三番蔵を監視することに。
- 丑三つ時、酒・肴付きで見張りを続ける二人の前に、雷鳴が轟くや否や三味線の音が聞こえてくる。勇気を出して扉を開けると帯と羽織が相撲を取っていて、三味線の音の代わりに猫が踊っていた。さらに一幅の掛け軸の中から菅原道真公が抜け出てきて「流された」
質流れと、大宰府に流された(=左遷された)を掛けたサゲ。
幾重にもレイヤーが連なる噺で、要素も多い。とはいえ付いていくのに必死になるものではなく、気楽に聞ける笑い話です。
もっともこれは流麗かつ飄々と語る今松さんの芸風によるところが大きいでしょうね。
珍しい噺が聴きたいのと、今松さんの飄々とした語り口が好きなので平日無理やりにでも伺えてよかった。
聴いているだけでほっこりニッコリ、心温まる夜。