アフィリエイト広告を利用しています。

【演劇ワークショップ】イキウメ『ずれる』の創作過程を覗く

イキウメの「Re:Creation ワークショップ」ー稽古場へ戻るー

演劇の舞台も落語の高座もLIVEの演奏も、観客は「完成品」のみを目にするのが通常です。
がしかし、個人的には制作のプロセスや裏っ側の話を聞いたり目にしたりするのがたまらなく好きなんですよ。

流行り言葉でいえば最も「推し」の劇団がオープン形式のワークショップを開催するとのTwitter告知投稿を見て、この千載一遇の好機を逃すものかと応募。
幸運にも抽選を通過し、参加することが叶いました。
その振り返りと感想を少しだけ。

イキウメの「Re:Creation ワークショップ」ー稽古場へ戻るー

ーーと称されたワークショップは、都内某所で土日の2日間(13時~18時)に開催され、どちらか1日のみに参加できる趣向です。
イキウメ側の参加はイキウメの主宰で作・演出を手がける前川知大さん、公演直後の『ずれる』に出演したイキウメの俳優5人(安井順平さん、大窪人衛さん、浜田信也さん、盛隆二さん、森下創さん)と声の出演の薬丸翔さん、ドラマターグの谷澤拓巳さん、スタッフの皆さん。
今回の参加がかなった当選者は、プロの演劇関係者やクリエイターと観客など50人程度。

最初の30分で前川さんによるオリエンテーション。今回のワークショップでは旅公演などでたびたび行うという「思い出し稽古」の設定との説明があり、その後事前に寄せられた質問に前川さんが答えていきます。
今回の稽古場には本番のセットが再現されているわけでは当然なく、ただし本公演をなぞって配置された平台とイスとバミりが。
『ずれる』を観劇した参加者の大半は、見ればすぐにセットを模したものとわかります。

前川さんはそれらの説明とともに、立ち上げから稽古初日までの流れ、本読みのスタイルといったプロセス面を淡々と説明。
のみならず劇作の考え方や大事にしていることまで、かなり踏み込んで明かしてくださったのは驚きで、これはワークショップ後半のディスカッションでも同様でした。

稽古セッション

『ずれる』の120分1幕ものを40分ずつ3分割し、途中10分の休憩を挟んで思い出し稽古が行われます。
ホリゾントもドアもない稽古場はさながらスケルトンの前衛的な舞台を観ているようで、そこがまた新鮮。
『ずれる』は衣装替えが多く行われる作品で、「着替え場」という公衆電話ボックスのようなスペースまで再現され、俳優は実際着替えが必要な場面ではその場に着替えるテイで留まります(ちなみに俳優が稽古で着た服はTシャツやトレパンなどです、念のため)。

参加者たる観客は今回「どこで見てもいい」とのことで、バミッてある舞台スペースをギャラリーが囲むように各々好きな位置で観られます。
稽古場を俯瞰していた俳優のひとり、浜田信也さんの「円形劇場みたいだね」とのつぶやきに、まさに!
ワシは今回背後から観たく、舞台では映らないキッチンのところから見学しました。文字通りバックステージ。この位置から観ることはまず不可能ですからね。

もうひとつ。後ろから見た理由は、前川さんが思い出し稽古中どのようにしているのかを見たかったから。
前川さんはファイリングされた台本(たぶん)をめくりながら、台詞を確かめつつ、俳優の動きをつぶさに観察し、ときどきメモを。
場面を止めることもダメ出しをすることもなく、時折笑みを浮かべながら、稽古を見守っています。
俳優に声をかけたのは最後の休憩直後。
「感情が高まるシーンが多いので、力を入れすぎないように。ケガするから」との旨を発したのが唯一です。

スタッフ×参加者によるディスカッション

セットの中央に前川さん+谷澤さん+俳優6人が座り、それを参加者が車座に囲んでディスカッションがスタート。
参加者側も演出家、演出助手、俳優、照明などプロが繰り出す鋭い質問に、作り手側がざっくばらんに、でも真剣に考えながら答えます。
いわば形を変えた「ワーク・イン・プログレス」である今回の試みについてや、作品を全員で練り上げる工程、最後の最後まで「これでよし」としないなど。

参加者としての感想まとめ:素晴らしい時間の共有

われわれ観客はライブたる演劇を観ているのだけど、イキウメの場合、創作プロセスでさえライブなのだと。
ディスカッションは参加者の問いも作り手の答えも、どれもこれも金言だらけ。ひとつだけ挙げるなら、前川さんが話された「よくわからないけど面白い。それって最高じゃないですか」ということ。
ほんとこれ、これなんです。

イキウメを最初に観たときがまさにそうでした。
しばらく口がきけないというか、考え込んで黙りこくってしまう衝撃。
そういうものに今後も出会いたいし、同時代にイキウメを目撃できたことにただただ感謝です。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性