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【ネタバレ】映画『サンキュー、チャック』:あの広告の意味するものが深すぎた

『サンキュー、チャック』

映画や演劇で。素晴らしかったのだけど、解釈が難しい、よくわからないって経験ありません?

マイク・フラナガン監督・脚本の『サンキュー、チャック』(2024年アメリカ / The Life of Chuck)を観た直近の私がまさに。で、原作のスティーヴン・キングを長年愛読する読書家(映画鑑賞済みだが本作の原作は未読)に本作の読解してもらい、それが腑に落ちたので、そのメモを以下に書き連ねます。

『サンキュー、チャック』あらすじ

フランスと日本で津波が、メキシコでは森林火災が、高校教師マーティ(キウェテル・イジョフォー)の住むカリフォルニアでは大地震が頻発していた。

電波もネットもSNSも遮断され、いよいよ世界が終わろうとしているなか、街頭看板やテレビ・ラジオに突如「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39年間に、ありがとう、チャック」という謎の広告が大量に現れる。
カメラ目線で微笑むネクタイ姿。広告の男、チャック(トム・ヒドルストン)とは何者なのか。

ここからネタバレ『サンキュー、チャック』解読

物語は第三章から始まり、第一章へと遡る構成です。

第三章「ありがとう、チャック」では終末を目前にして元妻フェリシア(カレン・ギラン)と再会したマーティが、星空を眺めながら「アイラブユー」と告げた瞬間ブラックアウトし、場面は広告の人物であるチャックの視点に一転。
彼が人生を39歳で閉じた瞬間から、少年期へとたどっていく逆時系列で物語は展開していきます。

で、物語を解読してもらい、以下のようなことと理解しました。

結論、第三章は死の床にあるチャックが見る夢の物語。

第二章「大道芸人サイコー」では会計士のチャックが会議に出席するために訪れた街で、ストリートドラマー(ポケットクイーン、プロのドラマー!)に出会い彼女の演奏で即興ダンスを披露。
失恋で落ち込む若い女性ジャニス(アナリース・バッソ)も加わり、群衆から拍手喝采を浴びる。
演奏後に投げ銭を山分けしたドラマーになぜ踊ったのか問われるも、「わからない」と答えるチャック。
彼は時折襲ってくる頭痛に静かに向き合っていた。

第一章「私の中には無数の人が存在する」では、彼がなぜダンス上手になったのか、なぜダンスを捨てて会計士の道を歩んだのかが綴られます。
ここでチャックをダンスパーティへと導く教師がマーティだったと判明。

実はチャックの心の内に多くの位置を占めていたのがマーティだった。
だから39年の人生を感謝するチャックの物語の語り部として第一章にマーティが出てきた、という解釈です。
マーティが元妻フェリシアの家に向かう道中で出会うローラースケートの少女は、第二章においてチャックが街中ですれ違う少女でもあります。

なるほどー。
ほら、夢って、時系列や同じ場面で居合わせる知人がめちゃくちゃだったりするじゃないですか。
そう考えると「今際の際の夢」説は得心できるんですよ。

第三章で登場し、チャックの臨終を見届ける妻ジニーを演じるクォリアンカ・キルヒャーさんはドイツ系アメリカ人ですが、どこかオリエンタルな雰囲気が。
それはチャックが片思いしていたダンスパーティーのパートナーがアジア系(演じるのはトリニティ・ブリスさん=中国系アメリカ人)であることからも、行き届いたキャスティングです。

マーティの祖父母が住んでいた屋敷の塔の部屋がカギを握りますが、これも見事に第三章につながります。
決して入ってはならないと祖父(マーク・ハミル、エンドクレジットを見るまで誰かわからなかった!)に厳命されていたマーティが、祖父の葬儀後に塔の部屋に立ち入り、その謎が明らかになります。
部屋は未来に起こる「自分の死の瞬間」を目にするところだったのです。

世界の終わり=自分の死で始まる第三章から、自分の死の幻影を目撃しながらも「私は素晴らしい」と人生をまっとうすることを決意する第一章へ。
時計の針を巻き戻す構成が奏功し、深い余韻をもたらします。

まとめ

世界の終末を語る物語かと思いきや、ひとりの男の足跡を描く絵巻物でした。

何がいいって、チャックを取り巻く老若男女が全員ナイスな人物であること。
チャックのセンスと繊細な内面を理解し助言するダンスの指導教師、ウォルト・ホイットマンの詩『自己の歌』を引用してチャックに可能性を説く教師、チャックにダンスを教える祖母などなど。

喜びと痛み、理想と現実、生と死。
それらをすべて表しながら、高らかに人間讃歌を謳い上げる。

『スタンド・バイ・ミー』(’86年)『ショーシャンクの空に』(’94年)など“表キング”モノとして、後々まで語られるであろうすてきな作品です。
公開から時間経過していながらほぼ満席だったのは、口コミの影響があったからかもしれません。

そうそう、ダンスの振り付けを『ラ・ラ・ランド』(’16年)のコレオグラファー、マンディ・ムーアさんが手がけているのもツボでした。

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