角川シネマコレクションの企画として2025年6月から7月にかけて劇場上映された「若尾文子映画祭」の1作、『からっ風野郎』(1960年大映、増村保造監督)を鑑賞。
若尾文子さんの艶姿で目を保養するつもりが、主演の三島由紀夫の目立ちっぷりばかりが焼き付いてしまい、おなかいっぱい。
『からっ風野郎』あらすじ
朝比奈一家二代目親分・武夫(三島)は出所するその日から、父親の仇である新興やくざ・相良(根上淳)に命を狙われる。武夫は自分のシマの映画館に身を潜めた際、もぎりの芳江(若尾)と出会う。純真な彼女に魅かれた武夫は次第にヤクザから足を洗おうと考えるようになる。が、そんな武夫に殺し屋・ゼンソクの政(神山繁)が銃を片手に迫っていた。
添え物扱いのキャストがもったいなさすぎ
三島由紀夫×若尾文子だけでも話題性十分のカップリング。武夫の弟分に船越英二、ナイトクラプの歌手で武夫の情婦に水谷良重、武夫の伯父に志村喬、若尾の兄に川崎敬三と脇を固める役者も重厚です。
昭和を知る人なら当時銀幕を飾っていたこれらの配役にも満足なはず。
実際は三島が登場シーンの大半を占め、若尾も含む周囲のキャストの登場シーンは3割弱の印象。まぁ仕方ないのでしょうが。
三島の自我が前面に
革ジャンを着込んで「俺には学がないからこの世界で生きていくしかない」なぁんて、肩で風を切る三島。
東大卒で旧大蔵官僚、作家としてすでに才能を発揮していたアナタにそんな台詞でカッコつけられても苦笑しかない。
世間に評価される自分と、理想とする自分に乖離があったんでしょうね。
不良を演じて理想を満たしたつもり。でも結局観客は三島の劣等感を見せられたに過ぎません。
主題歌の作詞と歌までやらせてもらえて、さぞゴキゲンだったことでしょう。
東大同期の増村監督には役者としてしごかれたようですが、それだって嬉しかったはず。
ヒロインの若尾を手籠めでモノにするとか、暴力を振るいまくるとか、今の若い女性が見たら眉をひそめる演出も。
これもひとつの時代背景としてアーカイブしておくことで、歴史の変遷を垣間見ることができます。
個人的にはドライな結末で溜飲が下がりました。
まとめ
現在50代の自分は、昭和の名女優たちの活躍も聞いたことがあるくらいで、リアルタイムでは知りません。
ただしブロマイドなどの資料写真や場面写真で見る女優たちのエレガントさといったら比類ない。
スタイルのよさでは現代の女優やモデルに軍配が上がりますが、品については……。
若尾文子さんが美貌と上品を兼ね備えた女優のひとりであることは、言うまでもありません。
2025年6月10日19時35分上映 @角川シネマ有楽町
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価格:2200円 |
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女優若尾文子[本/雑誌] (単行本・ムック) / キネマ旬報社 価格:3080円 |
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価格:2420円 |