アフィリエイト広告を利用しています。

【礼真琴退団公演】宝塚星組『阿修羅城の瞳』『エスペラント!』:トップスターの華と孤独

星組『阿修羅城の瞳』

星組トップスター、礼真琴さんの退団公演観劇(大劇場生観劇1、東京前楽と千穐楽ライビュ)。
以下ネタバレ全開で振り返ります。

『阿修羅城の瞳』あらすじ

鬼が跋扈する魔都と化した江戸末期。鬼たちを退治する鬼御門(おにみかど)の副隊長だった病葉出門(わくらばいずも/礼真琴)は、鬼退治の現場にいた女童を斬ったことで鬼御門を辞め、中村座の座付作家・四世鶴屋南北に弟子入りしていた。

出門は鬼御門を取り仕切る安倍晴明殺害の下手人として追われる女盗賊つばき(暁千星)と出会い、かつての仲間である鬼御門の副隊長・安倍邪空(極美慎)から彼女を咄嗟にかくまう。

尼僧姿の鬼の美惨らは、対決姿勢を強める出門に対し、鬼たちの救世主となる阿修羅の復活が近いと告げる。阿修羅とは何者なのか──。

礼さんにみる染五郎と太一の幻影ハイブリッド、暁さんの妖しさ

劇団☆新感線による同名作品を、小柳奈穂子先生が潤色・演出。
結論からいえば素晴らしい出来。原作の歌舞伎的ケレンや娯楽性を生かすも殺すも演出家次第であり、その点小柳先生の手腕が光っています。

個人的に新感線の同作再演(2000年)、再々演(2003年)を観ていたせいか、礼さんが当時出門を演じた市川染五郎(現10代目松本幸四郎)に寄せていて驚き。台詞回しからトーン、声音まで似ており、ここまでできるものかと。

ところが日数を経てライビュで改めて見てみると、染五郎みはほとんど抜け、礼真琴の創る出門になっていた。礼さんの場合、本番でも探究の過程なんだなあ。

本作は殺陣もまた見ものですがこれがまた鮮やかキレキレ。敵をバッタバッタとなぎ倒していく姿に、早乙女太一さんバリの立ち回りが被りました。

カギを握るヒロイン闇のつばきには暁さん。女役になると、もともとの見目麗しさやスタイルのよさがいっそう映える。美貌が悲劇をいっそう際立たせます。

第八景、つばきから阿修羅へ「恨みまするぞ、出門殿」「阿修羅城でお待ちしております、出門殿」と転生する場面などは背筋がゾクゾク。
文字通り鬼気迫るもので、新感線で同役を担った天海祐希さんの迫力を朧げながら想起しました。

青木朝子先生作曲の叙情的かつ難しいメロディに乗せる荘厳な悲恋のファンタジー。
中島かずきさんやいのうえひでのりさんも、礼さんや暁さんの共演はじめ、この凝縮された世界観に納得というか嬉しかったんじゃないかな。
新感線に起用するキャストを物色してたりして。

ショーで胸いっぱい

「青い星」を下敷きに生田大和先生が手がける後半の『エスペラント!』は、星組らしい躍動感よりもお淑やかさが際立つショー。

個人的には礼さんがロケットと共演する第七章が最高の場面で、退団する礼さんが次世代を担うジェンヌたちにバトンを渡すかのような演出に胸いっぱいです。
あのタップダンスはなんでもできる礼さんの迸る才能の一片であり、その才能を解き放つ本章以降フィナーレまでグッときっぱなし。

黒燕尾の男役とフォーマルなドレスの娘役と別れを惜しんだ後のラストダンスは、礼さんが初主演を果たしたバウ・ミュージカル『かもめ』(こちらも演出は小柳奈穂子先生!)主人公の心情を表す終幕のダンスを想起させます。
はからずも相手となる娘役トップがなく、ソロで自らの舞台に別れを告げる。

才能と決して表に出さない鍛錬、そして深い孤独。
もうここから先は、ひとり我が道を行け。
華やかで陽気なキャラクターの礼真琴さんと対照的な陰影がそこにはありました。

礼真琴さんを追って

ここからは個人的なメモゆえブラウザバック推奨。

『2011年版 宝塚おとめ』で知り、同年の『めぐり会いは再び』ルーチェ役から追ってきました。
思えばここからどんどん駆け上がっていく姿を見ていくときが最も楽しかった気がします。

「ロミジュリ」の愛のように女役を可憐にかつ強弱つけて演じられる器用さ。「ナポレオン」で初めてソロを1曲任され群舞も1人だけ違う振り付け、バウホールでの主役2公演などなど。
客席で見る礼さんの、のびのびと踊り歌う姿が眩しく、才能が弾け飛んでいました。

2番手からトップスターとなってからも当然、なんとかチケットが手配できたときには見させていただきました。
が、このころは既に「推し」というよりも異次元の才能を見ているような。ファン目線は超えて遠い世界のスターさんだったんですよね。

礼真琴ファンにはあるまじきことでしょうが、正直トップスターにならなくてもかまわない、彼女が楽しくステージを謳歌していればいい。それだけなのです。

とはいえ溢れる才能とスター性が放置されるはずはなく、ましてや礼さんも目標としていたであろうトップスターとしての活躍は周知の通りです。

これから先をどう進むのか。今は期待しかありません。
やってほしい役もあるけどそれは追々。

礼真琴さん、ありがとう。再びお会いできますことを。

2025年5月6日13時開演 @宝塚大劇場
2025年8月9日15時30分開演 @TOHOシネマズ日比谷
2025年5月6日13時30分開演 @TOHOシネマズ上野

礼真琴ラストデイ

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性