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前川知大さんの舞台『終わりのない』の深遠な世界。

舞台『終わりのない』

すげぇ舞台を観てきました。前川知大脚本・演出の『終わりのない』です(~2019年11月月17日、世田谷パブリックシアター ※兵庫、新潟、宮崎公演あり)。個人的には今年見た芝居のベストワンです。

両親や友人たちとともにキャンプ場に遊びに来た18歳のユーリ(山田裕貴)。近くの湖で溺れてしまったユーリが目覚めると、そこは見ず知らずの場所だった――という物語の導入から、観客はユーリの時間と空間を行き来する旅の目撃者に。

物語は2019年のキャンプ場、宇宙船、地球以外の惑星という3つの世界で展開します。ユーリの見ている世界は現実なのか、幻覚なのか、はたまた意識下なのか。

前川さんが今作の原典にしたギリシャ神話『オデュッセイア』は、いわば主人公が苦難から帰郷するまでの物語。では、幾多の苦難を経て主人公はどのように「還ってくる」のか。ところが、タイトルは『終わりのない』。ひじょうに意味深です。

乱暴強引に言えば、自分を探す旅と束ねることもできなくもない。けれども、とてもじゃないけど、ひと括りにはできない作品です。意識と無意識、地球と宇宙、過去と未来。そうしたパラレルワールドを変幻自在に置換しつつ、その実描かれるのは家族であり、愛であり、魂の救済でもある。SFを思わせながらノスタルジーで弛緩させ、群像劇かと思わせながらホラーにも転ずる。

舞台は傾斜をつけた装置をそのままに、暗転で場面転換させるミニマルさ。幕間なしで一気に見せる緊張感も好感。遅まきながら、前川さんのことは2017年の『プレイヤー』で初めて知り、この『終わりのない』で2作目の観劇となりましたが、とんでもない演劇人が出てきたなと。興奮しながら劇場を出ました。もう一度、当日券で観てみて、ディテールを確かめたいと思います。

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hiroki「酒と共感の日々」

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