ネット検索でたまたま偶然知った演劇博物館(=早稲田大学坪内博士記念演劇博物館)に行ってきました。
結論、プロだろうと観客だろうと演劇にかかわる人は一度は訪ねたほうがいい。
通称「エンパク」こと早稲田大学坪内博士記念演劇博物館は、坪内逍遙(1859-1935)の古稀と全40巻『シェークスピヤ全集』完訳を記念し、1928(昭和3)年に設立。
アジア唯一の演劇専門博物館だとかで、日本をはじめ世界各国の演劇・映像関連資料100万点にもおよぶコレクションを誇ります。
建築様式は逍遙の発案によりエリザベス朝(16世紀後半)のイギリスの劇場「フォーチュン座」を模して設計されたそう。
実際にシェイクスピア劇を上演でき、正面が舞台、図書閲覧室は楽屋、両翼は桟敷で前庭は一般席と構成されているのだから筋金入りの凝りようです。
訪問時は「2025年新収蔵品展」の後期(2025年5月12日~8月3日)が1F特別展示室で開催中。
『大菩薩峠』(1994年、新橋演舞場)のポスターは、刀を抱えて閉眼鎮座する主演の緒形拳のワンショットが、んまぁカッコいい。
朝倉摂の舞台デザイン原画や森光子の旧蔵衣装、越路吹雪公演の絵看板など、実際見ていなくても心が沸き立ちます。
3階の常設展示室は、エンパクの誇る所蔵コレクションにより、西洋演劇・古代中世・近世・近現代・映画とテレビ・民俗芸能と東洋演劇に分類され、それぞれジャンルごとに歴史をたどれる構成。
歩いて見て回るだけで演劇の日本史と世界史がハイライトできます。
展示室の最後、日本の演劇史を表したチャート図が面白かった。ポスターか何かにして売ればいいのに。
個人的に最も心打たれたのは、同館の2025年度春季企画展「演劇は戦争体験を語り得るのか――戦後80年の日本の演劇から――」。
1894年の川上音二郎から2025年に至るまで、戦争を題材にした、あるいは戦争が時代背景にあった演劇の公演写真や公演ポスター、舞台美術模型を掲出。
高度経済成長期(「当事者世代」)の三好十郎、安部公房、三島由紀夫。原爆をモチーフにした別役実、井上ひさし、野田秀樹。
「焼け跡世代」の唐十郎、寺山修司、つかこうへい。80年代以降多様な視点で戦争を見た斎藤憐、マキノノゾミ、古川健。
今なお続いている沖縄の戦争を映す菊田一夫。知念正真、詩森ろば、内藤裕子。
ここに挙げた劇作家はごく一部で、上記のほか多数の作り手の資料が展示されています。
資料の背景や通路に掲げられた、戯曲の一場面を切り取りテキストパネル化した展示手法も素晴らしかった。
ここまで詳細に知ることができて入場無料。
演劇に触れている者として、たびたび伺いたい聖地でもあります。
—
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1
TEL:03-5286-1829(平日9時~17時)
展示室開館時間:10時~17時(火・金曜は19時まで)
休館日はWebサイトで確認