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【ネタバレ】演劇『ヴォイツェック』:精神を蝕んでいく男を森田剛が演じきる

【ネタバレ】『ヴォイツェック』感想

森田剛主演の演劇『ヴォイツェック』(2025年9月23日〜28日、東京芸術劇場プレイハウス/岡山・広島・北九州・兵庫・愛知公演を経て11月にリターン公演)初日を観劇。
ネタバレで振り返るので今後鑑賞の方はブラウザバック推奨。

原作はドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーによる未完の同名戯曲。
2017年にロンドンで上演されたものを小川絵梨子さんが台本化&演出しています。

いやぁしっかし、予想を軽々と超える陰惨な話だったわ。

『ヴォイツェック』あらすじ

1981年の冷戦下。イングランドから西ドイツ・ベルリンに国境警備として赴いたヴォイツェック(森田剛)は、妻マリー(伊原六花)と赤ん坊の息子とともに貧しく暮らしている。彼は副収入を得るため、謎の実験を行う医師(栗原英雄)を訪ねる。
それは毎日1回錠剤を飲む治験で、目的や人体に何の影響をもたらすのかは不明。錠剤を飲み始めてから金を得られるようになったヴォイツェックだが、精神状態は不安定さを増していく。

【ネタバレ】ヴォイツェックの常軌を逸する狂気

深く愛するマリーに愛情と安心を与えるため、それを実現する手段であるお金がほしい→兵士の給料だけでは足らない→副収入が得られる人体実験に身をやつすーーこの負のループ。

マリーへの深い愛情の証として、彼女からの愛を勝ち取るために、軍の内規を犯し妻にも口外できないバイトをする。
唯一付き合いのある同僚アンドリュース(浜田信也)とマリーの浮気を疑い、彼を問い詰めると「自分より下等な人間だから付き合ってやったんだ」と返り討ちに遭うヴォイツェック。
これも現実のものかどうかは描かれない。要するにヴォイチェックの妄想かもしれないわけです。

挙げ句は自分の子どもの性別も判断できなくなるほど誇大妄想、被害妄想に陥ったヴォイツェック。
疲弊した末に別居を切り出したマリーをはずみで扼殺したヴォイツェックは、自ら招いた事態の悪化を飲み込めないまま銃で自裁する。

妻を失い、自らも失う。
幸せになるために始めた副業がこんな結末をもたらす運命の皮肉でもあります。

出演者への感想

森田剛さんの巧緻な演技

初めて森田さんの芝居を生で観ましたが、これが素晴らしい。
母親に捨てられたトラウマのフラッシュバックに苛まれ、壊れる寸劇の内面を膨大な台詞量で俯きながら早口で喋り、痛々しさを表しています。ややしゃがれた声音もヴォイツェックのキャラクター造形にひと役。

元ジャニーズの肩書きはもはや必要なく(それどころか邪魔かもしれない)、この人そのものの演技で十分です。

しっかりした共演陣

アンドリュース役の浜田信也さんは劇団イキウメでおなじみの役者で、今回はややフィジカルを使う場面もある役どころ。
高身長とスタイルのよさが相まってか、小柄な森田さんと並ぶ対比性が起用のねらいだったのかも。

ヴォイツェックの上司の大尉役の冨家ノリマサさん(個人的には『侍タイムスリッパー』以来)、栗原英雄さんのベテラン演技巧者の使い方がややもったいなかったかな。

伊原六花さんは凛としたプレーンなヒロインで、本作唯一のきれいな人格者。ゆえに最期を迎えてしまう。

まとめ

あまりの鬱展開ゆえ、本筋以外の部分にも思考できました。
たとえば舞台機構。盆回しなど装置の使い方もうまく、これによって出ハケもうまく機能。
紗幕によって奥と手前に隔てられた世界はヴォイツェックとマリー夫婦の家中と外界との境界を表しているかのようです。

それにしても、森田剛さんのファンは本作にどんな感想を抱くのだろう?
客席の大半が宝塚ばりに女性で占められていて驚かされたのですが、つまりほとんどが森田ファンってことですよね。

こういう難役(かつ悲惨な)をファンは望んでいるのか、ぜひ聞いてみたくなりました。

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|SMWS会員|訪問したBAR国内外合わせて200軒超|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|健全な酒活|ブログは不定期更新2,000記事超(2022年11月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性