日本でも大人気のバレエダンサー、アダム・クーパーを主演に迎えた『コーラスライン』鑑賞(2025年)。
かれこれ20年くらい演目がかかるたび観に行っていますが、今回新演出と聞いてかなりワクワクしていました。
新演出版成功の可否は、物語が損なわれているかいないかに尽きます。
ブロードウェイ初演から半世紀も続いている名作の演出に手を加えることでピンとこなくなったら、それはダメってことです。
『コーラスライン』のあらすじについては下記記事を参照してください。
で、新演出版を観た結果は、やっぱりよかった。
SNSでは「変えすぎ」という感想も。まぁわからないでもない。
アダム・クーパーさん演じる演出家ザックの立ち位置から振り付け、果ては役の性別チェンジ(!)に至るまで、実際驚くほど変更されていますから。
個人的には「今の時代を映したクラシック=古典」というのが率直に感じたところ。
『コーラスライン』はもう古典と言ってしまいますが、新演出は随所に風潮を反映しているなと。
従来版と新演出版の違い
- 演出家ザックは客席からマイクを通して舞台上のオーディションメンバーに呼びかけるが、新演出版は同じ舞台上で絡む
- メンバーの女性たちが皆、アマゾネスのような強々キャラクター(キュートなルックスの女優がいない)
- リチー役が男性→女性に
- オーディションメンバーの楽屋を舞台袖(下手)に見せる(俳優が引っ込まない)
- オケピを舞台上に設け、ハイライトで演奏者の様子を観客に見せる
他にもザックとポールという主要キャラがクライマックスの「ONE」に登場しないとか、振り付け全般を大幅に変更したとか(踏襲している部分もある)。
ザッと振り返っただけでも、こんなに挙げられるわけです。
象徴的なのがオーディションの後半、帽子を持ったザックがその帽子に引っ張られるような場面。
演出家の苦悩であり、私生活を壊してもこの世界から逃れられないメタファーとなっているかのようです。
それにしても。
本作を観るたびジェンダーから人種差別、家庭崩壊、格差までセンシティブな問題を1975年(初演)時点で扱っていたマイケル・ベネットの先進性に驚嘆させられますが、この新演出版を観たらどう言うだろう。
時代を先取りした古典にさらなる演出を加えたわけで、リチー役の性別変更などはポリコレ的配慮を感じてしまいます。そこまでしないとアカンかね。
本作でアダム・クーパーさんを初めて間近に見ました。
ジェレミー・アイアンズみたいなイケオジぶりだったなぁ。
でもワシと同学年と知って仰天。もっと年上かと思ったよ。
公演終了後たまたま楽屋口の出待ち風景を目撃しましたが、気さくにファンと交流していて好感度大でした。
2025年9月15日 13時30分開演 東京建物ブリリアホール(スペシャルONEシート)