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【演劇】『ハムレット』:若さ弾ける染五郎とルヴォー演出の今的リアル

日生劇場『ハムレット』(2026年)市川染五郎主演

八代目市川染五郎が『ハムレット』(2026年5月・日生劇場、6月・大阪と愛知で公演)、歌舞伎外での初のストレートプレイが初のシェイクスピア作品とは信じがたいほど堂に入った演技で、もうさすがとしか。

父を殺した叔父クローディアスへの憎悪と、叔父に籠絡され後妻となった母ガートルードへの理不尽に押し潰されそうになりながらも抵抗し、ひたすら復讐の牙を研ぐハムレット。
心の内を表すかのような全身黒づくめの衣装ですが、実年齢22歳の染五郎さんの華やかさは隠しようもなく、まさに向かうところ敵なしの様相。

染五郎さんは身体を動かしながらーーときに小道具のボールを叩きつけながら、階段にもたれながら、書物を読みながらーーエネルギーを持て余したハムレットにキャラを昇華させています。
内省の演技での表情や、感情を露わにする台詞回しなどで父・十代目松本幸四郎と面影が重なる瞬間があったのも発見でした。

演出のデヴィッド・ルヴォーおなじみ赤を貴重とした舞台美術は、1幕では黒みががっているものの、クライマックスが近づくにつれ徐々に紅を帯びていく趣向。
クローディアス役の石黒賢さん(意外にもこれが初シェイクスピアとか)着用の外套の赤が象徴的ないっぽうで、その妻ガートルード役の柚香光さんは豪奢なドレスを纏います。
惨劇を予期していたかのような血色のクローディアスと、おそらくは想像もできない金色のガートルード。夫婦ふたりの衣装もまた皮肉です。

ちなみに柚香ガートルードの1幕の衣装は腕と背中を大胆に見せるドレス。
手足の長さとスタイルのよさが表れる衣装で、夫の肩や掌に手を添える場面が多く、しかもハムレットの狼藉から夫を守ろうと身を呈する場面も。
このあたりはやはり宝塚男役トップスターの名残でしょうか。弱いはずのに芯は強いガートルードなのです。

これが初舞台というオフィーリア役の當間あみさんは、落ち着きと台詞が聞き取りやすい声のよさ。
本作の要のキャラ、ホレイショ役の横山賀山さんとレアティーズ役の石川凌雅さんはいずれも2.5次元出身らしく安定感抜群。
若手のなかにポローニアス役の梶原善さんがいい味です。

東京サンシャインボーイズで見ていた梶原さんが染五郎さんや柚香さんと共演するとは……観客として感慨深さを禁じ得ません。
他のキャストもバッチリで文句のつけようのない出来でした。

クローディアスとガートルードの親密さはいかにものルヴォー演出ですが、いっぽうでシェイクスピアおなじみ行進の場面が昨今の戦争情勢を連想させたり、ノルウェー王子フォーティンブラスの口上で締める結末をいじるなど、大胆な翻案が見られます。

しっかしまぁ『ハムレット』は演劇のテッパンですな。
個人的に久しくシェイクスピアは福田恒存訳の戯曲を読んでばかりでしたが、今回の松岡和子訳で『ハムレット』もアップデートできました。

戯曲=構造がしっかりしているから、どんな演出でも「そんな手があったか」と観客も発見があります。
翻って万一「これはちょっと」と首を傾げたくなるような後味なら、それは演出家の責といっていいでしょう。

2026年5月23日17時開演 日生劇場

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hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|毎日健全な酒活・週5でBAR飲み|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|ブログは不定期更新2,700記事超(2026年5月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性