財政破綻は起きるか起きないか、ではなく、いつ起きるか。日本はとっくにそのフェーズに来てしまっている。
暴論でしょうか。
素人がいきなりすみません。ですが、私は現状の政策が続くかぎりどこかで暴発するだろうと考える悲観論者です。
本当に国家財政が行き詰まるのが怖くて仕方ないのですが、そんな私にとって、真山仁『オペレーションZ』(新潮文庫/新潮社より2017年初版)は刺さる小説でした。
『オペレーションZ』あらすじ
経営危機に陥った大手生保の帝国生命が資金繰りのため国債1兆円を投げ売りした。副総理の江島隆盛が裏で手を回し事態を収めるも、国債価格は暴落。
同時に帝国生命は顧客による保険解約騒ぎを起こしてしまう。
直後、梶野首相が心臓病を理由に辞任し、後任として江島が首相の座に就く。
江島は国債頼みの政治からの脱却を宣言し、国家予算を半減すべく、若手財務官僚を集めた極秘作戦をスタートさせる。
そのプランをまとめた首相がテレビ会見を開くや否や、他省庁や与野党、さらには世論も弱者切り捨てと猛反発。
江島の方針をよしとしない財務官僚のなかにもマスコミに作戦の情報を漏らす内通者がいることが発覚する。
歳出半減を断固実行すべく、江島はついに国会解散の大博打に打って出るーー。
「国債神話」その危うい綱渡り
日本が財政破綻しないのは国内の金融機関が手分けして日本国債を引き受けているからで、もしも日銀が売れ残った国債を引き受けた場合、その途端にヘッジファンドが空売りなどを仕掛けてくる。
そうして日本国債の買い手がつかなくなったら、あとは財政破綻しかない。
財政破綻とは一義的でありませんが、強いて言えばこのような国債暴落がひとつでしょう。
その後に訪れるのは日本円無価値化による輸出入停止でエネルギー資源や食物が枯渇、メガバンクはじめ金融機関が倒産、公務員に給与が払われなくなり行政サービスが停滞、そのうえハイパーインフレで国民生活が破綻ーーと書いているだけで暗澹たる心持ちになってきます。
官僚への取材と勉強会の実施に裏打ちされたリアリティ
冒頭、国家破綻後のアルゼンチン首都ブエノスアイレスの街を視察する江島、暴風雨による作物壊滅で存亡の危機に陥った山形県の村長、IMFの専務理事が赴任を終えて帰途に着こうとする若手財務官僚に江島への親書を託す場面など、複数のキャラクターによる何方向からもの展開に緊迫が高まります。
大臣(政治)と官僚のせめぎ合いや駆け引き、財務省と各省庁との予算折衝、破綻自治体への視察、保険未加入で追い詰められるシングルマザーなど、上流(官)から下流(民)までどれもが「うわ、ありそう」な場面で、とくに後半200ページほどは夜中一気に読み終えるほど。
ネトフリのドラマ『地面師たち』でリーダー役の豊川悦司が「目的まであと一歩というときに足を引っ張るのは敵ではなく、必ず味方です」と仲間の綾野剛に言う台詞がありましたが、本作もまさにそれ。
江島の政策参謀的な準主役・若手官僚の周防篤志(財務省主計局課長補佐)も、大手新聞社の政治部記者に情報を売った疑惑をかけられ、内調の取り調べを受けます。
併行して描かれるのが情報を売ったうえに江島を陥れる直属の上司で、その裏切りの理由が政策への反発からではなく、優秀な周防に対する嫉妬というのが、もう。
真山仁さんはこれらの描写にあたり50もの主要参考文献ほか、政府刊行物、ビジネス誌、新聞各紙に当たるいっぽうで、官僚相手に勉強会を実施して題材に生かしています。
その取材力・リサーチ力・行動力すべてが突き動かされているかのようです。
「続編」のクラファンが1500万円超を達成
本作にはSF小説家(モデルは筒井康隆、小松左京あたりをリアルに想像)が描く“小説中小説”が出てきます。
タイトルは『デフォルトピア』。
国家破綻を意味する「デフォルト」と絶望的な暗黒社会を意味する「ディストピア」を掛けた作者の造語で、まさにデフォルト後の日本社会に起こる悲惨な出来事を皮肉まじりに描きます。
この小説を実際に小説として上梓すべく、真山さんがクラファンを実施したところ、最終ゴールで1500万円もの応援を得る快挙を達成(私も少額ですが参加しました)。
自費出版を覚悟しての実施だったそうですが、幸いなことに光文社から出版が決定しました。
真山さん本人も複数メディアで述べていますが、支援金は主に取材に生かされるとか。
危機は発生してからでは手遅れ。
確かに財政を悪化させた政治に対しては憤まんやるかたないですが、それとこれとは別で。
「都合の悪い真実」に直視する人がひとりでも多く増えて、結果「ああ、何もなくてよかった」と人生を終えられるほうがいいと思いません?
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