東京・上野の落語協会の上階にある定席、黒門亭に春風亭一之輔さんが出演するのでダメ元で整理券を取りに行ったら、開演1時間前で間に合った。
というわけで聴いてきました。
一. 権助魚 一若
一. へっつい幽霊 一之輔
仲入り
一. 太神楽曲芸 勝丸・丸果
一. 夢の酒 吉窓
2026年7月4日12時開演 黒門亭
鈴本演芸場と黒門亭の番組は習慣でチェックしているのですが、一之輔さんの名を発見したときは目を疑いました。
ほんとかなと前週に協会前を通りがかった際に貼り紙を確認したところ、やはり間違いない。

一之輔さん自身も珍しい(というか新鮮な?)はずで、高座に上がるなり、仕草とか上下とか落語はほんとはこれくらいの距離のほうがいい、と。
黒門亭からほど近い末広町の道具屋さんについてまくらで触れながらの「へっつい幽霊」を。
へっつい=竈から出てきた幽霊相手に、渡世人の熊五郎が丁半博打を持ち掛ける噺。
負けてもう一丁と粘る幽霊を熊五郎が「おまえはもうお足(銭)がないだろう」と諌めて、幽霊が「決して足は出しません」とサゲる。
黒門亭に来るようなお客さんはご存じだろうけど、などと客席をいじりつつ、冒頭、へっついがどういうものなのか、中盤で噺を一時停止して登場人物(道具屋夫婦、渡世人の熊五郎や若旦那など)の整理と「竈は今どの家にあるか」などを解説するあたり、いかにも一之輔さん。
今年初めて「へっつい幽霊」をかけることや、この噺は構造がなかなか複雑で、じゃおまえが変えればいいだろう? 鈴本じゃこんなこと言わないんだよ! と自分で突っ込むアドリブを利かせるのも毎度の冴えわたり。
文字通りの「小屋」である黒門亭の座布団席で見る一之輔さんは、寄席やホール落語会の前方席で見る近さとはまた違う趣きと迫力が。
キャパ2000の大ホールをひとりで満席にする超売れっ子でも客席の多寡にはこだわらない姿勢。
たいていの噺家はそうかもしれないけど、やはり一之輔という人が演じると違うなぁと不思議な感動に襲われました。
翁家勝丸・丸果さんの太神楽曲芸
ここ黒門亭で色物さんを見るのは初めてで「あんな狭いとこでできるのかな」と。
で、どうやって五階茶碗や傘回しを見せるのかと思いきや。高座の上ではなく前に立って、つまり客席に立つ形で演じるのです。
それでも傘回しでは天井に和傘の合羽(石突)の部分が付きそうになるくらいで、客席前方のお客さんが下から覗き込むように観る形に。
勝丸さんのもとに弟子入りした丸果さんが前座修業を終え、この日も浅草と上野で出番が控えており、これから寄席で見かけることになるでしょう。
噺家のなかには「逆ピラミッド=真打ほど数が多く前座の数が少ない」と落語界を自嘲気味に言う人もいるだけに、若い人がバンバンこの世界に入ってくるのはいいなぁと。しみじみ。

