イプセンの戯曲『人形の家』をロシアのティモフェイ・クリャービン氏が演出した『NORA』観劇。
スマートフォンを使った大胆かつ斬新な演出とのことでしたが、個人的にはひじょうに観づらく空回っているようにしか見えず。
むしろあれほどの古典の良さが削がれているようですらあり残念でした。
『NORA』あらすじ
弁護士の夫ヘルメル(勝地涼)の稼ぎで何不自由なく暮らすノラ(黒木華)。
幼い息子への愛情も欠かさず、ヘルメルからは「かわいい妻」と愛され、LINEのやり取りを欠かさない。
クリスマスイブの日、信託銀行頭取に内定したヘルメルのもとに旧友クログスタ(鈴木浩介)が訪ねてくる。
ヘルメルの部下に収まるはずのクログスタは、勤務成績不良でヘルメルからクビを宣告される危機に陥っていた。
クリスティーン(瀧内公美)は親友ノラの紹介を受け、ヘルメルの部下=クログスタのポジションに就く。
怒りと焦燥に駆られるクログスタは、ノラが過去に犯した不法な借金をネタに、ヘルメルに解雇を撤回させるようノラを脅迫する。
斬新な演出で本来のテーマが希薄化してしまう皮肉
上記あらすじの通り、物語自体は原典を踏襲しています。
自分が籠の鳥扱いされていたことに気づいたノラが夫と子どもを捨てて決然と家を出ていくところまで、ちゃんとなぞっています。
従来のストレートプレイとの大きな違いは、キャラクターのやり取りにスマホのメッセージを取り入れていること。
冒頭からスマホ上のテキストメッセージを舞台上部(上3分の2といっても過言ではない)に投影する演出です。
黒木華さんも勝地涼さんも瀧内公美さんも鈴木浩介さんも、手持ちのスマホでしょっちゅうテキストを入力しています。
で、その入力している画面が舞台上にリアルに(もちろんスマホ、アプリのUIまで)大写しされるのです。
もちろん俳優は台詞を喋りますが、俯いてスマホを入力している場面も同時展開するので、観客は舞台上の演技とスマホの画面を同時に見せられます。
つまり、ひじょうに疲れるw
前から3列目の席の私は、映画館の前方席のごとく画面を見上げるようでした。
それはまぁ現代的なコミュニケーションとしての側面を描きたかったのだと納得できなくもないのですが。
習いごとでダンスするシーンやホームパーティでゲストを招待しているときにもスマホを握りしめるノラに、若干の不自然さとイラ立ちを覚えたのも確か。
原典は女性の自立という発表当時衝撃的だったテーマを据えた名作なのに、スマホを用いた演出が先立ってしまい、肝心の訴えが薄味化した気がするのは私だけ?
いいキャストを起用しているのに、実にもったいない、惜しい。
私が観た回でテレビカメラが入っていたらしく、たぶんWOWOWで放送されるのでは。ご興味あれば。
2026年7月22日18時開演 @東京芸術劇場プレイハウス
