松濤美術館で開催された『没後50年 髙島野十郎展』(2025年6月7日~同年9月13日)初日と最終日直前に鑑賞してきました。
本展は、プロローグからエピローグまで全6章からなる構成で、ゆかりの画家の作品や書簡などの資料含め約170点を展示。
野十郎の回顧展としては過去最大の規模とか。
福岡県出身の洋画家である野十郎は、旧帝大農学部水産学科を首席卒業しながらも画家の道を選択し、独学で美術を学んだ後、特定の画壇などに流されることなく作品を描いてきたのだそう。
キャリア初期の作品は岸田劉生やゴッホ(比較解説されています)に画風が似ているし、独特の陰影はもしかするとレンブラントやラ・トゥールなどの影響も受けているのかも。
恥ずかしながら野十郎という人を全然知らず初めて観た感想としては「闇夜を浮き彫りにし」「陽だけでなく陰も映す」人なのだな、と。
有名な蝋燭の絵はそれに向き合って鑑賞している間は時間が止まったかのように無音に感じられるし、晴れだけなく雨の姿も描き表す法隆寺塔に暗さもまた一興という発見がある。
そう、陽光ではなく陰影なんです。
枯れ木、割れた皿、鄙びて下を向く向日葵、落ちた煙草の灰、夜の雲に霞む月。そういったピーク過ぎの、寂しく儚いものをさりげなく映す。
包み隠したくなるかもしれない、ある種の負の側面をもそのまま切り取る。
月並みですが、作品のひとつひとつから孤独や寂しさを抱える人たちへのメッセージになっているのかも。
私が行った2回目は会期後半の平日でしたが、なかなかの混雑でゆっくりは観られなかったほど。
人気があるのもわかる気がします。
ちなみに蝋燭の絵は野十郎がなじみのある人にそれぞれ描いて贈呈していたそうです。
現代アートビジネスみたいな商業性もしばしば話題になる昨今、こういうギフトができるアーティストってすてきです。
本展は宇都宮美術館、福岡県立美術館、豊田市美術館、大阪中之島美術館など各地巡回しますのでぜひ。

