博報堂ケトル代表取締役社長、嶋浩一郎さんの新著『アイデアはあさっての方向からやってくる』(日経BP社)の出版イベントに行ってきました。
「ムダはムダじゃない!斬新なアイデアを生み出すために大切なこと」と題されたイベントで、聞き手はネットニュース編集者の中川淳一郎さん。博報堂在籍時代に同じCC局で企業広報を担当していながら接点がなかったという二人ですが、中川さんが博報堂を辞め、フリーランスになってから仕事する機会を得たんだとか。
トークイベントは、嶋さんに対して中川さんが考えた10の質問を投げかける構成。仲が良いとはいえ、ヨイショめいた質問は一切なく、即興トークで嶋さんの思考の瞬発力と深さを中川さんが手繰り寄せる。そんな感じで進んでいきました。
若い人をねぎらおうと自分がお気に入りの店に連れて行ったら、食べログでの評価に「本当に大丈夫なんですか?」と疑われた話。エクストリームユーザーの行動をキャッチする。一般人が天才になるには「名古屋人」にならねばならない、などなど……。マーケティングや企画のタネの見つけ方、発想法まで、カチコチの思考を柔軟にするヒントが満載でした。
なかでも「人間は文句を言えるけど、欲望は出せないもの」という嶋さんの至言。ヒザを打ちたくなりました。
嶋さんが2004年に創設に携わった『本屋大賞』は、もともろ書店員の文句がヒントになったんだとか。
書店員の文句……「なんで、この本が文学賞?」
書店員の欲望……「私ならこれを推す」
文句と欲望は表裏一体で、さらにその欲望には「私には売りたい本が他にある」という本音が隠されています。
この声に応え、全国の書店員に「最も売りたい小説」を投票してもらう賞が誕生したわけです。
目利きの書店員が推すわけですから、コメント付きのポップはそのままエビデンスになるようなもの。今ではその受賞作はベストセラーになる本も多く、完全に定着しました。
このくだりは本に詳細が記されていますので、興味のある方はお手に取ってご一読してみては? アイデアが行き詰まりがちなあらゆる人はもちろん、日常を面白く過ごすコツが盛り込まれた本です。つねに柔らか頭と軽快なフットワーク、行動力は維持していたいですね。