「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」ーーあまりにも有名な冒頭の一節と最初の段落から引き込まれる「おれ」の世界。
『坊っちゃん』(新潮文庫/1906年初版)は、松山中学校赴任時代の体験をもとにした夏目漱石の代表作のひとつです。
直情径行な青年教師「おれ」と、それを取り巻く「山嵐」「赤シャツ」「野だ」「うらなり」など同僚教師のデフォルメされたキャラが海辺の町・松山の情景とともに活写されます。
本作は教科書文学としての代表作でもあるけれど、なるほど、若い感性で読んだほうが断然楽しめるはずです。初読は若ければ若いほどいい。
おそらく教科書以来でつらつらと読みましたが、ちょっと居心地がむずむずする感じ。
主人公の坊っちゃんがまっすぐすぎて、「実際にこんな人と接するのはヤだな」と思っちゃったんですよ。
坊っちゃん目線の一人称文体は、無気力、卑怯、老獪、狸ぶりなどの世俗にまみれた人間のいやらしい行いを中和せずストレートに暴き出してしまう。
人間ってこういう側面もあるよね的なものを、坊っちゃんは許さない。悪く言えば融通が利かない。
だから、読んでいてなんとなく心持ちがよくない。
少し前に放送された『半沢直樹』『サラリーマン金太郎』(いずれもTBS)などが受けたのは、現実には存在しないまっすぐな男だったからでしょ。
だから皆がスカッとした。大ヒットした。
この『坊っちゃん』も近代化が進む明治39年という出版当時において、失われつつあった勧善懲悪をよみがえらせた点においても特筆すべきなのでしょう。
たしかに坊っちゃんの周りのキャラはどうにも小物で、情けない。でも読んでいて彼らを笑えませんでした。
自分は朱に交わっても赤くならないと言えるか。
組織のロジックの前に、現実と折り合いを付けながら生き延びていく人間の小ささが頭をよぎった作品でした。
そうそう、本作に出てくる坊っちゃんの家の下女で、主人公のメンター的存在である清(きよ)は、太宰治と乳母たけの関係を彷彿させるものがあります。
坊っちゃんと清のやり取りは、尊く、切ない。
でもこういう理解者が一人いるだけで、人は生きていけるんだよ。
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