毎年8月、東京・台東区谷中の臨済宗 全生庵で行われる「幽霊画展」(〜2020年8月31日、10時〜17時 ※変更の場合あり/拝観料500円)に今年も行ってきました。
今年は流行り病の影響もあってか、土曜日なのに鑑賞に訪れた人はかなり少なめ。
おかげでゆっくり見られたからいいんですけどね。
彩色がほとんどなく白と墨だけの掛け軸の絵画がほとんど。
伝円山応挙、河鍋暁斎、伊藤晴雨などの「あぁ、どこかで見たことある」という幽霊画もあれば、無名ながらも描写筆致巧みな画家の作品もあり、見ていると暑さと時間を忘れさせます。
個人的には、丸顔美人が描かれた鰭崎英朋の『蚊帳の前の幽霊』がうっとりする美しさ。
でもいちばんだなと思うのは、怖さと美しさが同居した作品。
たとえば、顔を手で隠したお菊さんがこちらを見ている池田綾岡『皿屋敷』がそう。
昨年の記事でも触れたのですが、女性の顔の隠れた幽霊画がいちばん好み。想像すればするほど恐ろしくも「面を上げて、こちらを見てほしい」と好奇心そそられます。
顔を隠すといえば、もうひとつ。
昭和の日本画家、鏑木清方の『茶を献ずるお菊さん』がそれで、盃台にフタ付きの茶碗を載せて茶を差し出す女性が描かれています(ググれば画像が出てきます)。
まさに鏑木の得意とした美人画といった筆致ですが、この絵の美人=お菊さんは顔を不自然なほど伏せている分、異様な画であるとわかります。
鏑木といえば、東京国立近代美術館で「築地明石町」が公開されたばかりですが、美人画とはパーツが明確に描かれていなくても成立するのだなと、鏑木の幽霊画を見てワケのわからぬ独り合点をしてしまいました。
全生庵は東京メトロ千代田線の千駄木駅から5分ちょっと歩きますが、エアコンの効いた自室から脱出して、外に涼みにいくにはオツな遊びじゃないでしょうか。
あ、展示室はエアコンがバンバン効いているのでご安心を。
でもエアコン効かせなくたって、これらの画で寒気を感じる人はいるかもね。
昼間の鑑賞ではさほどでなくても、夜はこの展示室にいたくないなぁ。
だってやっぱり怖いもん。