岩波書店の出版PR誌「図書」の800号(2015年10月号)で、映画監督の飯田譲治さんが今井雅之さんの追悼文を寄稿しています。
今井さんは代表作『ウインズ・オブ・ゴッド』の生みの親として知られる俳優。2015年5月にがんで亡くなりました。
「紙碑――今井雅之のこと」とタイトルが付けられたその文章は、今井さんと生前深い交流があった飯田さんが、故人の熱い性格と大きな器量をたどるものでした。
怒りを創造のエネルギーに昇華させる力を持っていたこと、末期がんに侵されながら最後の最後まで舞台に立とうとしていたこと、今井さん亡き今『ウインズ・オブ・ゴッド』を後世に伝えていこうという動きがあること。
なかでも今井さんとその仲間である若い俳優たちを指して、飯田さんが書いたパートは強くうなずけるものでした。下記に原文を引用します。
強いエネルギーを持った者には大きな吸引力があり、エネルギーの少ない者はそれに引き寄せられていく。そしてそこからエネルギーを分けてもらい、上のステージへと飛翔することができるのだが、やがてその強い力に巻き込まれ、振り回されるようにもなっていってしまう。それが負担になり、振り回されることから逃れようとすると、最大限の反発をしなければならなくなり、そこから大きな確執が生まれていく。それは必然なのだ。
ハブになる、つなげる力のある人。それを取り巻く周囲の人。その関係性の始終を飯田さんは見事に言い当てています。
現状のぼくはエネルギーをいろんな方からもらっている。自分がハブになるどころか、おそらくは確執となる前に疲れてしまい、スーッと身を引くと思う。飯田さんのこの文を読むたび、こんな不義理じゃダメだよな、と自戒しています。
それにしても部屋に溜め込んでいる出版PR誌、ついつい読み込んでしまい捨てられません。新しい読書のヒントを得るものなのに。