大胆であり繊細であり。ときに攻撃的、ときにナイーヴ。「リユニオン」と銘打たれた2014年のクラブチッタ川崎公演は、いまだ興奮が呼び覚まされる緩急自在のライブでした。そのザ・ブレッカー・ブラザーズが当時のメンバーで再来日すると聞き、コットンクラブとブルーノート東京でのライブ計8公演のうち、各1公演の席を確保して行ってきました。
1978年リリースの『Heavy Metal Be-Bop』は、緊張感とドライブがかかったメロディが怒涛のように続くアルバムです。たとえば、この曲。普通にぶっ飛びます。
高校時代にテリー・ボジオというスーパードラマーを知り、その活動をたどっていくうちに、ザ・ブレッカー・ブラザーズを知り、フランク・ザッパを知り……。そういった変遷で、彼らの音楽に触れました。
今回メンバーを至近距離で目の当たりにして聴いても、案の定。パワーもテクニックも衰え知らずですね。いや、各日2部制して曲数を大幅に減らした辺りは(8曲かな?)、川崎の衝撃に比べればやや物足りないですが、まぁ演ってくれるだけありがたいってもの。
ランディ・ブレッカー熟練のトランペットがメロディをリードし、奥方のアダ・ロヴァッティがテナーサックスで覆いかぶせ、また掛け合いを展開。ギターのバリー・フィナティが軽快に彩りを添え、テリー・ボジオのドラム&ニール・ジェイソンのベースのリズム隊が骨太な音を爆発させます。
コットンクラブもブルーノート東京もセットリストは全く同じだったと思います。M1「SPONGE」から「FUNKY SEA,FUNKY DEW」「SOME SKUNK FUNK」、アンコールは(一度も下がらず、ランディが「もう1曲聴きたい?」と客席に聞いて、すぐさま)看板チューンの「EAST RIVER」へ。途中アダの「GHOST STORIES」や、バリーが故マイケル・ブレッカーに捧げた「MIKEY B」というスローな曲を挟みながらの凝縮版でした。
名ギタリストの高中正義さんは、ライブではアドリブに見せかけて緻密なリハーサルをしていると思いますが。たぶん、このメンバーもそんな感じなのでしょう。自由なボールのやり取り見せかけて、実はシナリオが決まっている。みんなトシ相応に無理せず、バランスを計算して1曲に臨もうという円熟感を垣間見ました。
ぼく一番お目当てのテリーですが、セットは写真の通り(コットンクラブで撮影)。フルセットはさらに巨大な要塞と化すのですが、今回のライブは控えめな組み方です。それでもチャイナシンバルやスポーク型のハイハットシンバル、口径の異なる3つのバスドラを駆使したフィルインは半端なし。特にぼくが見たブルーノートは公演の最終日だったせいか、マシンガンのような粒の細かいストロークのオンパレードでした。バスドラの踏み方も絨毯爆撃のよう。
金属的でいてジャズ由来の温かみもある。テクニシャンの集まりなのに音が重い。ジャズ、ロック、フュージョン、ファンクありとあらゆるジャンルが渾然一体となったサウンド。セッション系の音楽は聴かないという人にこそ、一度触れてほしいものです。
2014年が最初で最後と思っていたから本当にうれしい。また演ってほしいな。そのときはかつての曲だけでなく、新曲も入れて、ぜひ。