東京・大手町の紀伊国屋書店でレジ前に平積みしてあった本を読みました。昨秋に買って放置していましたが、フォトリーもどきで読了しました。
「プロカウンセラーの聞く技術」(東山紘久著、創元社、税抜1,400円)
あっさり読み終えるだろうと思いきや、全31要素の214ページ、内容が非常に濃く、かなりの読み応えでした。
ぼくは仕事でインタビューすることもあり、慣れているとはいえ、「聞く」ことの本質については常に興味が尽きません。この本は聞いているつもり、な表層を見事に打ち砕いてくれました。
著者の東山さんは京大教授も務めた臨床心理士。単なるインタビュアーとカウンセラーの聞き方の違いを、会話の実例を交えて浮き彫りにします。
非常に安心しました。白黒つけるのが苦手な部分もあるのですが、著者は昭和17年生まれの人生の大先輩。結論を急ぐ会話には、慎重です。自分の考えを伝える際の「個人的には」とか、「難しいですね」などの答えを否定しません。
ほかにも
- 正論だけ言って、自らの行動を縛る評論家になるな。
- 子供に名前や年齢を聞くな。その時点で会話は対等でなくなる。
- 「反論したくなる」とか「聞くのではなく尋ねてしまいたくなる」とか、相手の話を素直に聞けないなら会話を降りよ。
- 相づちの重要性。話を深めたければ、聞き出したければ、聞き出そうとせずに相づちを打て。
- 共感とは、芝居上手のこと。
と、ぼくからすれば納得だらけの論に満ちていました。
最近のトレンドとして、「会議では話さないヤツは出席する資格なし」などという、米国的な風潮が立っていること。あれは話さない人からすれば、話して目立ちたくない、波風立てないこともさることながら、話すことで「無駄に会議を長引かせたくない」意図もあるのではないかな。
「悪口を言うな」も昨今の風潮だね。そりゃあ、それが貫ければ高潔ですよ。でもね、著者がひと昔前に見られた主婦の井戸端会議を引き合いに出し、悪口は「浄化作用」だと書いていたのに安心したのもまた事実。聖人君子ではあるまいし。
「リッスンせよ、アスクするな」とは、コヴィー博士の『7つの習慣』にも通じることです。
いやはや傾聴への道は一日にしてならず。この訓練は意識の徹底でもあります。まず、そこから始めます。